臨床検査情報システムや検体検査装置など、臨床検査製品を手掛けるエイアンドティー。同社は2016年5月、基幹システムを含むIT基盤をAzure上に全面移行した(図1)。狙いは限られた人員でのインフラ管理の効率化だ。

図1 少ない人員でシステムの安定稼働を実現
図1 少ない人員でシステムの安定稼働を実現
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 エイアンドティー 経営管理本部 ITマネジメントグループの千葉信行リーダーは「IT部員は7人いるが、インフラの担当者は実質3人。従来のIT基盤では、何か問題が起きても素早く対応するのが難しかった」と振り返る。

 千葉リーダーによると従来のオンプレミス(自社所有)環境では「数カ月にわたり、2週間に1回程度の頻度で仮想化ホストサーバーに原因不明の障害が発生していた」という。

 基幹系システムには会計、購買、生産管理に加え、顧客向けのサイトなども含まれる。「障害が起きるとビジネスに与える影響が大きいため、必死で対応していた。少ない人員で安定稼働を続けるのは難しいと感じていた」と話す。

後手から先手の対応へ

 同社のIT運用を支援していたエクイニクス・ジャパンとは、運用・保守に関する定例会議を毎月1回開いていた。従来は障害に基づいて、CPU負荷やメモリー使用率などの上限値を見直して、アプリケーション設定やリソースの強化策を議論していた。千葉リーダーは「障害が起きる前に状況を把握して、対策を講じる体制に変えたかった」と語る。

 障害の兆候や発生を早期に把握・対応することや、BCP(事業継続計画)のために、IT基盤をAzure上に刷新することを決断した。

 Active Directory(AD)、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)、ファイルサーバーといった主要システムは、Azureの東日本と西日本リージョン(広域データセンター群)でアクティブ・アクティブの冗長構成にしている。

 IT管理用のAzureサービス群である「Operations Management Suite(OMS)」を使い、負荷状況などの詳細なログを収集。稼働状況をリアルタイムで把握できる体制を整えた。OMSはAzure導入の決め手の一つでもある。

 OMS導入の効果について千葉リーダーは「過去レポートではなく、リアルタイムの状況を見ながら議論できるようになった」と語る。

 東西リージョンで冗長化していたので、2017年3月に起きたAzure日本リージョンの大規模障害の影響も回避できた。「3月8日に東日本リージョンで障害が発生したが、ADやDHCPサーバーは西日本リージョンで正常に動作していた」(同氏)。