Q:企業が顧客管理などにマイナンバーを使ってもよい?

従来の住民票コードは利用範囲が法律で厳しく制限されていたが、利用範囲の拡大が期待されているというマイナンバーは、企業がビジネスに活用できるのか?民間での利用が進むと、米国の社会保障番号のようになりすましの多発が懸念されるが、対策はあるのか?

A:民間企業における利用範囲は、マイナンバー法で規定されていて、当初は(1)社会保障、(2)税、(3)災害対策の3つの分野に限定されます。民間分野は対象外であり、顧客管理をはじめとして、企業がビジネスに活用することはできません。セキュリティの確保についてはさまざまな対策がとられており、例えば米国の社会保障番号の場合の大きな問題点である本人確認については厳格に行うことが義務付けられており、ICチップを搭載した個人番号カードもそうした対策の一つになっています。

 マイナンバー、すなわち個人番号の制度は、2013年5月24日に制定された「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(個人番号法)により定められていて、利用範囲についても、利用分野を限定するとともにそれに該当する事務を列挙している。例えば、社会保険分野における年金、雇用保険、医療保険、生活保護の資格や給付等に関わる事務、税分野における確定申告書、届出書、調書等に関わる事務、災害対策分野における被災者生活再建支援金支給や被災者台帳の作成等に関わる事務である。

 民間企業では、従業員に本人や扶養家族のマイナンバーを提出させ、源泉徴収票や給与支払い証明書等の各種法定調書にそれを記載して税務署に提出する必要がある。また、従業員以外についても、例えば社外の個人宛てに支払いをする場合、支払い調書への記載の関係上、相手方にマイナンバーの提出を求めることになる。このように企業もマイナンバーを直接扱うことから、それを企業自身のために使ってもよいものと勘違いしがちだ。

 そもそも、マイナンバーを扱える立場には2種類ある。まず、マイナンバーを使って事務を行う「個人番号利用事務実施者」であり、主に行政機関が該当する。もう1つは、それらの行政事務の遂行に協力する立場でマイナンバーを扱う「個人番号関係事務実施者」であり、主に企業がこれに当たる。つまり、企業がマイナンバーを勝手に使えるわけではなく、例えば顧客のマイナンバーで顧客管理したり、従業員のマイナンバーを社員番号の代わりに使うなどはできないのである。違反すれば罰則が適用される。