連載第1回は、マイナンバー対応のためにやるべきこと、連載第2回は、マイナンバーを取得する際の注意点を述べた。今回は、マイナンバーを利用する際の注意点を見ていく。

 マイナンバーを利用する際のポイントは、4点ある。1点目はマイナンバーをどう移動するか、2点目はマイナンバーをどこでどう利用するか、3点目はマイナンバーの不正利用をどう防止するか、4点目はマイナンバーは何とひも付けてよいかである。

 <社員の難波舞さんのマイナンバーを、難波舞さんが所属する営業課が取得した後、マイナンバー担当課である総務課に回し、総務課で源泉徴収票の作成、雇用保険手続き等を行う場合>を例にして、考えていく。

1.マイナンバーをどう移動するか

 まず、営業課で取得したマイナンバーをどのように総務課に移動するか。マイナンバーを従業員から会社に提出してもらう際は、マイナンバーの「収集/提供」に該当するが、同一法人内であれば、別の部署間や従業員間でやり取りする場合は「収集/提供」には当たらず、「利用」の範囲に含まれる。複数の従業員を介したり、部署をまたいだりする移動では、マイナンバーが紛失したりのぞき見られたりするなどのリスクもあるので、安全な移動方法を検討しよう。

 とはいっても、移動状況・取得者・取得方法によっても、問題の軽重は異なってくる。営業課と総務課が同一事務所内であれば、あまり問題はないだろう。紛失や盗み見などを防止するために封筒などに入れ、総務課へ徒歩で持参するか、社内便などで送付する。

 これに対し、仮に<保険会社から委託を受けた営業員が顧客を1軒ずつ訪問してマイナンバーを取得した後、保険会社の本店総務課に集約する>といった場合は、さらに慎重な対応が必要となろう。例えば、マイナンバーを受け取ったらすぐに封筒に封緘(ふうかん)したり目隠しシールを貼ったりする、マイナンバーが記載された書類を紛失等しないよう確実に管理する、簡易書留や特定記録郵便、宅配便などで本店総務課へ送付するなどの措置が必要となるだろう。

 もっとも、マイナンバーだからといって、特別な手法が求められるわけではない。ハガキにマイナンバーを記入させて目隠しシールを貼ることなく郵送するような方法は、安全管理措置上、不適切であるが、会社が以前から扱っている年末調整の書類や健康保険証、顧客の申込書・契約書なども、通常であれば紛失などを防止するための配慮をしているはずである。これらの取り扱い方を参考にマイナンバーの移動方法を決定していこう。

 もちろん、これまで以上に慎重な対応を行ってもよい。例えば、同一事務所内での移動についても、目隠しシールの貼付、封緘、書留利用などの措置を行う方法もある。マイナンバーが紛失したりのぞき見られたりしないよう、自社の実情に即した移動方法を考えよう。