(1)個人番号カードは、希望者が取得できるICカードだ。希望者しか所持していないものである。(2)通知カードは、2015年10月以降にマイナンバーが通知される際に全対象者に簡易書留で郵送されるカードだ。ICカードではないため、ついうっかりどこに保管したかわからなくなってしまう恐れがある。このため、通知が始まる10月より前に、従業員に対し、通知カードをなくさないように注意喚起した方がよいだろう。

 個人番号カードを取得しないで、通知カードを紛失してしまった場合は、(3)マイナンバーが記載された住民票の写しを、従業員に持って来てもらおう。市区町村の窓口に行くか、市区町村によってはコンビニで取得できるところもある。また通常の住民票の写しを請求すると、マイナンバーが記載されていないので、「マイナンバー付の住民票の写し」を取得しなければならないので、この点に十分留意する必要がある。

 いずれにせよ、日中に勤務している社員からすれば、住民票の写しを取得するのは手間である。(2)通知カードを紛失しないよう、社員に呼びかけるのが重要だ。

本人確認の方法

 社員から、(1)個人番号カードか、(2)通知カードか、(3)マイナンバーが記載された住民票の写しのいずれかを受け取ったら、社員が身上書などに記入したマイナンバーと、(1)(2)(3)に記載されたマイナンバーが合致していることを確認しよう。(1)(2)(3)のコピーを会社が保管する必要はないが、本人確認をしたというチェックのために保管しておいても構わない。ただし保管する場合は、マイナンバーが記載されたその他の書面や電子ファイルと同様に、取り扱いには十分配慮しなければならない。

 本人確認が杜撰(ずさん)だと、マイナンバーによるなりすましが横行する恐れがある。そのためマイナンバー法では会社に対しても本人確認を義務付けている(マイナンバー法16条)。ただし、本人確認をうっかり忘れてしまったからといって、直ちに罰則が科されるわけではない。

 マイナンバー対応というと、「やらなければならないことを厳格に考えすぎて不安が強い会社」と「自社には関係ないと思って何にも準備を進めていない会社」に二極化する傾向もうかがえる。だが、あまり過敏にならずに、マイナンバー制度の本格施行前に、本人確認として何をチェックするかを検討し、マイナンバー制度の稼働後も粛々と事務を進めれば、うっかりミスがあっても、直ちに罰則が科されるわけではない。通常の人事業務、経理業務、総務業務と同じように対応していこう。

プライバシー影響評価でリスクをチェック

 以上が、社員のマイナンバーを取得する際の注意点である。余力のある読者の方は、マイナンバー取得時のリスクについて「プライバシー影響評価(特定個人情報保護評価、PIA)」の考え方に基づいてチェックしてみよう。

 プライバシー影響評価では、個人情報の取り扱いフェーズごとに、起こり得るリスクを考え、防止のための対策を検討する。起こり得るリスクにはさまざまなものがあるが、典型的なリスクとして、取得の場面では(1)過剰入手、(2)不適切な方法、(3)間違い、(4)漏えい・紛失が挙げられる。