2015年10月以降の一斉取得

 次に、難波舞さんがすでに社員である場合。2015年10月以降に行う全社員のマイナンバー取得は今回限りのことなので、特に現行実務に沿わせる必要はない。もちろん、年末調整のタイミングなど、現行実務の区切りのよい時期に合わせて行うことも可能である。

 ただし、あまりに早期に取得しないことが重要だ。マイナンバーは2015年10月中旬ごろから通知が始まるものの、対象者が住民票対象者の全員と広範であるため、通知が完了するまでには時間がかかる。会社があまりにも早くマイナンバーの取得を始めると、従業員によってはまだマイナンバーが届いておらず混乱する恐れもあるので、この点に留意する。

2.取得ルート

 次に、誰がどのように取得するのかを決定する。担当者と責任者を決めることが大切だ。

 しかしそういわれると、「担当になりたくない」「責任者になりたくない」という声も聞こえてきそうである。ここで重要なのは、誰がマイナンバーを取り扱うかを明確にすることだ。誰でもマイナンバーを取得できるとなると、マイナンバーに必要以上に触れる者が出てきてしまう。またマイナンバーの取扱者が増えれば増えるほど、管理が大変になるし、万一不正があった場合に、誰が不正をしたのか、何が原因だったのかを追及することも難しくなる恐れがある。

 そこで、会社としてマイナンバーを取り扱う人を決め、その人たち以外はマイナンバーを取り扱わないようにする。また、会社として責任者を立てることで、個々の社員のモラルに委ねるだけではなく、会社としてマイナンバーを取り扱う人を限定してマイナンバーの取得プロセスを適正に行っていくことにつながる。

 「担当者以外はマイナンバーを取り扱えないのか」という質問を受けることがあるが、発想が逆である。マイナンバーを誰も彼もが取り扱うことがないように、マイナンバーを取り扱う人を明確化するわけである。そのために担当者を決めるのであるから、担当者以外がマイナンバーを取り扱うのであれば、その「担当者以外」は、実際は「担当者」であることになる。担当者の決定は、従業員の個別氏名を列挙したりする必要は必ずしもない。「○○課〇〇担当」としてもよい。会社の中で誰を指しているのかが明確になるようにしよう。

3.取得方法

 社員からマイナンバーをどうやって取得するかの方法も合わせて検討する。書類に記載してもらい取得するのか、システムに入力してもらうのかなど、方法を考える。マイナンバー法上は、どのような方法でも許されるが、マイナンバーが漏えいしたり紛失したりすることのないよう、安全面に十分注意しなければならない。

 また、当たり前のことだが、社員から見てよくわからない形でマイナンバーを取得しないようにする(個人情報保護法17条)。だまし討ちのような形でマイナンバーを取得してはいけない。会社がマイナンバーを取得するということが社員から見て分かる形で取得する。通常の方法であれば特に問題はない。