連載第1回では、マイナンバー対応のためにやるべきことを述べた。今回は、マイナンバーを取得する際の注意点を考えていく。比較的シンプルなケースである、<A社が、給与所得の源泉徴収票の作成事務のために、社員の難波舞さんのマイナンバーを取り扱う場合>を想定し、取得の際の注意点を述べる。複雑なケースは、機会があれば別途解説する。

 マイナンバーを取得する際のポイントは、4点ある。1点目は、いつマイナンバーを取得するか。2点目は誰が取得するか。3点目は、どうやって取得するか。4点目は、利用目的の特定・通知等である。5点目は、本人確認をどうするかである。

1.取得タイミング

 連載第1回でも解説したように、まずは現状の事務の流れを確認し、その中にマイナンバーを追加するシミュレーションをする。その際、2015年10月以降に行う全社員のマイナンバー取得と、2016年度以降に入社する新入社員や中途入社社員のマイナンバー取得とに分けて、考えよう。

2016年度以降に入社する社員

 まず、難波舞さんが2016年度以降に入社するケース。この場合は、源泉徴収票の作成に必要な情報を、現状ではいつの時点で取得しているかを確認する。そして、そのタイミングで、マイナンバーも合わせて取得できるかを考える。

 例えば、採用時に身上書を提出してもらって住所などを取得している場合は、身上書にマイナンバーを記載する欄を設け、身上書の取得タイミングでマイナンバーを取得するかどうかを検討することが考えられる。そのタイミングでマイナンバーを取得することが事務処理上難しかったり、安全管理上の問題があったりするのであれば、別のタイミングでの取得を検討する。

 方法は身上書に限られるものではなく、現行の実務上、情報を取得しているタイミングと合わせるのか合わせないのかを、検討していくことがポイントである。また、社員のマイナンバーが変更された場合は、その旨を届け出てもらう必要があるので、それをどのタイミングで行うかも検討する。

 マイナンバー法上は、必要な範囲内であれば、どのタイミングでマイナンバーを取得しても構わない。社員の場合は給与支払いが予定されているので、採用した後はどのタイミングでもマイナンバーを取得できる。採用内定者については個別具体的な状況に左右されるものの、内定者が確実に雇用されることが予想される場合(正式な内定通知がなされ、入社に関する誓約書を提出した場合など)には、それ以降はマイナンバーを取得することが可能だろう。

 一方、ボランティアのように給与等の支払いが予定されておらず、法定調書を作成・提出する必要のない者から、マイナンバーを収集することは違法である(マイナンバー法20条)。実際に取得まで至らなかったとしても、必要がないにもかかわらずマイナンバーの提供を求めること自体が違法(マイナンバー法15条)なので、十分に注意する必要がある。

 上記の点を順守するためには、マイナンバーの取り扱い場面を具体的に洗い出すことが重要である。事前に洗い出した場面以外では、マイナンバーを取得しないようにしよう。ただし、「違法」とはいっても、これをうっかりしてしまったからといって、直ちに罰則が科されるわけではない。