今の事務の流れにマイナンバーを追加する

 次にやるべきことは、現在の事務の流れを確認し、その中にマイナンバーを追加するシミュレーションだ。

 例えば、「従業員と扶養家族の税務手続き」であれば、〇月に従業員に「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者控除申告書」、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらい、部ごとに取りまとめて経理部に集約し、書面を経理部キャビネットに保管のうえ、ITシステムに入力(システム保守は委託するが入力は経理部が行う)、〇月に経理部にて源泉徴収票を作成、〇月に税務署と本人に源泉徴収票を交付といった、今、会社で行っている事務の流れを把握する。

 これに対し、現行の事務の中にそのままマイナンバーを足し込むことで問題がないか、シミュレーションしていこう。扶養家族の情報は、従業員から、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの提出時に取得するのか、それとも別の社内手続きの際に取得するのか。書類の流れは、今と同じく部ごとに取りまとめて経理部に集約する方法でよいのか。システムへの入力は、今と同じく経理部が入力する方法でよいのかなどを検討する。

 つまり、情報の取得・利用・委託・提供・管理・廃棄というフェーズごとに、現状を確認し、マイナンバー制度後の事務の流れを検討する。現行事務のままでよければそのままで、変えた方がよいところがあればどう変えるかを検討する。検討した内容を書面化すれば、マイナンバー用の社内マニュアルとなり、取扱規程となる。

現行の事務を基本に考えればよい

 マイナンバー制度が本格施行されるからといって、今までと実務が劇的に変わるわけではない。基本は現行実務のままであり、現行実務で取り扱う個人情報の中に、マイナンバーが追加される形になる。マイナンバー対応のための準備も、現行事務を基本としつつ、現行の事務の中にそのままマイナンバーを足し込むことで問題がないかを検討していくとスムーズだ。

 また実際にマイナンバーを取り扱う際の注意点は、次回以降に解説するが、マイナンバーはそれほど怖いものではない。大切に扱わなければいけないが、マイナンバーはあくまで個人情報の一種である。会社では、今までも個人情報を取り扱ってきており、その中には従業員の給与額、賞与額、メンタル状況、人事査定情報などもあったはずだ。会社では、このようにマイナンバー以前にもセンシティブな情報を取り扱っているわけで、マイナンバーに対しても過剰に構えすぎる必要はない。

 マイナンバーがそれ以外の個人情報と違う点は、なりすましの危険がある点と、個人情報を集約することのできる「キー情報」「索引情報」である点だ。このため、マイナンバーには、それ以外の個人情報に対する義務+アルファが求められる。マイナンバー法の条文は難解であるが、この「今までの義務+アルファ」を果たすためのポイントはシンプルだ。「取り扱い場面を限定すること」「安全に管理すること」「なりすまし防止に本人確認をすること」である。

 次回以降では、マイナンバーの取得・利用・提供・委託・管理・廃棄のポイントについて解説していく。次回はまず、取得の際のポイントを解説する。今回は抽象的な解説も多くなってしまったが、次回以降は、具体シーンに即した注意点を具体的に述べていく。