企業における具体的なマイナンバー実務

 直接的な影響が及ぶ人事と経理の実務について、そのあらましを簡単に紹介しておく。なお、これらの実務をコンピュータで処理している場合、当然ながらそのアプリケーションソフトもマイナンバー対応にバージョンアップしておく必要がある。

(1)人事部門の事務

 人事部門では、従業員の給与計算だけでなく、所得税の源泉徴収、住民税の特別徴収、社会保険料(健康保険・介護保険、年金保険、雇用保険・労災保険)の支払いや届け出・申請など、各種手続きを行っている。例えば、従業員の入退社や住所変更についても行政機関と異動連絡事務を行っており、今後はこれらの事務手続きにおいてマイナンバーを記載する。

 マイナンバーの利用開始は2016年1月からとなっており、マイナンバー対応事務の運用を確認しておくと同時に、従業員のマイナンバーを取得する必要がある。従業員のマイナンバー取得は2016年1月以前からでも可能だが、その作業に入るまでに安全管理措置を実施しなくてはならないことに注意が必要だ。

 2016年1月からの利用開始といっても、それぞれの事務ごとに開始時期が異なる。退職所得源泉徴収票の事務では1月からすぐにでも始まる可能性があるが、所得税に関しては2016年分の所得から対象となるため、2016年の年末調整から利用が始まる。また、住民税は翌年課税のため、マイナンバー付きの給与支払報告書の提出は2016年1月ではなく2017年1月からとなる。健康保険の事務については、被保険者と被扶養者のマイナンバーを取得するが、その取得方法や時期についてはまだ明らかになっていない。

(2)経理部門の事務

 経理部門では、税関係の申告書や法定資料の提出において、マイナンバーおよび法人番号を記載することになる。特に、国税の法定調書の作成事務では、2016年1月以降の支払いからすぐにマイナンバーを使う。

 企業が通常提出することが多い調書としては、配当や剰余金分配などの支払調書、報酬・料金などの支払調書、給与所得や退職所得の源泉徴収票などがあり、講演料・原稿料の支払いや退職所得源泉徴収票などはすぐにでも利用が始まる。金銭を支払った相手(個人)にマイナンバーの告知を求め、管理していかなくてはならない。

 また、法人番号については制限なく利用できるため、公的機関へ書類を提出する場合には、自らの法人番号を記載することを前提に考えておいたほうがよいだろう。