アプローチ1は既存の人事/給与システムをバージョンアップするなどしてマイナンバーを格納する項目や制度対応に必要な様々な機能を加えるものだ。一方、アプローチ2ではマイナンバーを格納する専用システムを新規に設け、源泉徴収票などを出力する際は既存の人事/給与システムに格納された情報とマイナンバーを照合/結合して帳票を出力するという方法を取る。

 アプローチ1は比較的安価に対応できることが利点だ。その半面、人事/給与システムのアクセス権設定や運用ルールを見直し、必要のない社員がマイナンバーを参照してしまうことがないように注意する必要がある。

 一方のアプローチ2はマイナンバーが個別に格納されるため、番号の収集や保管に関する業務フローを既存の人事/給与システムの運用ルールとは別に新たに策定できることが利点となる。この専用システムをセキュリティの高いデータセンター内に配置するという選択肢もあるだろう(ただし、マイナンバーの管理/保管を外部に委託する際には企業がしかるべき監督責任を果たすことが求められる)。

 また、アプローチ2は専用システムの導入費用に加えて、既存の人事/給与システムとの連携作業が必要になることが難点となる。

結論を必要以上に急がない

 アプローチ1とアプローチ2のどちらが適しているか は個々の企業によって異なる。重要なのは「時間が足りないから」と結論を必要以上に急がないことだ。マイナンバー制度対応における人事/給与システムの改変には迅速かつ慎重な姿勢で取り組むことが重要と考えられる。

 中堅・中小企業にとってマイナンバー制度への対応は少なからぬ負担といえる。だが、避けることのできない負担であるならば、そこから何らかのメリットを得ようと努力することが大切だ。

 マイマンバー制度の施行を通じて、従業員は自身の個人情報を企業に提供する。そこでは「会社は自分のマイナンバーを正しく管理してくれているか」という関心も生まれるだろう。企業にとっては個人情報保護やセキュリティ対策に関する社内意識を高める絶好の機会となるわけだ。このようにマイナンバー制度に対してはできるだけポジティブな姿勢で臨むことが、負担をメリットへと変える秘訣となる。

 中堅・中小企業の方々にとって本稿が意義のあるマイナンバー制度対応の一助となれば幸いである。