「2016年1月にマイナンバー制度が導入されると何をしなければならないのか」を正しく理解している企業はそれほど多くない。特に中堅中小企業では理解も対策も遅れている。中堅中小企業の情報化動向に詳しいノークリサーチの岩上 由高シニアアナリストに、状況を解説してもらった。

 2015年に入って、「マイナンバー制度」に関する情報が数多く提供され始めた。政府によるテレビコマーシャルでの告知も始まり、多くの国民が知るキーワードの1つになってきた。

 マイナンバー制度は国民1人ひとりに12桁の番号が振られるだけでなく、企業の日々の業務にも大きな影響を与える。本稿では中堅・中小企業がマイナンバー制度への対応を進める際に押さえておくべきポイントを解説していく。

残された時間はわずか、まずは制度の認知/理解が急務

 「マイナンバー制度において企業が対応しなければならない事項は何か」と聞かれたとき、すぐに答えられる方はどれくらいいるだろうか。実はマイナンバー制度において企業が果たすべき義務については、まだ十分に認知・理解されていない。ノークリサーチが2015年1月に年商5億円未満の小規模企業と年商5億円以上50億円未満の中小企業に対して、「マイナンバー制度の認知状況」を尋ねた結果を図1に示した。

図1●マイナンバー制度の認知状況
図1●マイナンバー制度の認知状況
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 マイナンバー制度の「内容を理解しており、自社で対応すべき事項も全て把握している」という回答は小規模企業で8.5%、中小企業でも12.5%にとどまっている。つまり8~9割の企業はマイナンバー制度において自社が取り組むべきことは何かを理解していないことになる。

 企業におけるマイナンバー制度への対応では「従業員に各自のマイナンバーを申告してもらい、それを源泉徴収票などの書類に記載すればよい。そのためには人事/給与システムにマイナンバー用の項目を追加すれば十分である」という誤った理解も少なくない。そこで以下ではQ&A形式で企業にとってのマイナンバー制度対応のポイントを整理してみた。