連載第2回から第5回までは社員のマイナンバー、第6回は社員の扶養家族のマイナンバーを取り扱う場合の注意点を述べた。今回は、接触頻度の少ない人のマイナンバーを取り扱う場合の注意点を考えていく。<A社が、報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書作成事務のために、外部取引先の毎南良さんのマイナンバーを取り扱う場合>を想定し、マイナンバーを取り扱う際の注意点を述べる。

 接触頻度の少ない人のマイナンバーを取り扱う際のポイントは、3点ある。1点目は取得担当者と取得タイミング、2点目は本人確認、3点目は廃棄時期である。これらの点以外は基本的に、社員のマイナンバーと同様の点に気をつければよいだろう。

1.マイナンバーの取得

(1)従前の事務フロー通りでもよいが、変更が必要な場合も多い

 マイナンバー法上は、必要な範囲内であれば、どのタイミングでマイナンバーを取得しても構わない(連載第2回参照)。原則として、マイナンバーを取得するために新たな担当者を決めたり、特別な時期を検討したりする必要はなく、これまで通りの事務フローの中でマイナンバーも取得すれば足りる。

 相手が社外の人の場合、これまでも担当者が、報酬等の振込先の銀行口座や支払調書に記載すべき住所・氏名など、税務手続きに必要な情報を取得してきたと思われる。これらを社外の人に尋ねてきた担当者が、同じタイミングで、マイナンバーについても聞き取ることが可能だ。
もっとも、原則は上記の通りではあるが、実務を考えると、下記に示すように、これまでの担当者・タイミングを変更しなければならない場合も多いだろう。

(2)マイナンバーを取得する担当者

 まず、マイナンバーを取得する担当者についていえば、従前と同じ方法を採用すると、マイナンバーに触れる社員が数多くなってしまい、会社として社員の監督が困難になることも考えられる。例えば、テレビ局や出版社では、個人出演者・著者等に対し、担当者・編集者が、銀行口座などの情報を個別に聞いている場合が多いだろう。マイナンバーの取得も同じようにすると、個人出演者・著者を担当する社員が例えば数百人、数千人といた場合に、それらすべての社員がマイナンバーを取り扱うことになってしまう。

 確かに、マイナンバーを取り扱う担当者は「社内で〇人以内に限定しなければならない」という決まりはない。業務上の必要があって、安全・適法な取り扱いが担保できるのであれば、極論をいえば、1社でマイナンバーを取り扱う者が数百人、数千人であっても、違法ではない。とはいえ通常、マイナンバーを取り扱う者が多くなればなるほど、会社としての管理・監督が大変になる。このため、業務上の必要性、業務フローの妥当性、マイナンバーの安全・適法な取り扱いの担保など、さまざまな側面を総合的に考慮して、誰がマイナンバーを取得する担当者となるのかを判断するべきである()。

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 つまり、原則論では、これまで振込先の銀行口座等を聞き取っていた担当者が、それと同時にマイナンバーを聞き取ってもよいものの、マイナンバー制度の施行に伴い、従来の事務フローを見直し、経理担当者などが直接、社外の人のマイナンバーを取得するようにする会社も多いだろう。

(3)マイナンバーを取得するタイミング

 マイナンバーを取得する時期についても、基本的には、これまで社外の人から振込先の銀行口座等を聞き取っていたのと同じタイミングで、マイナンバーも聞き取ればよい。ただし、そのタイミングでマイナンバーを尋ねても、すぐには教えてもらえず、支払調書の提出時期までにマイナンバーの取得が間に合わない恐れもある。

 社員であっても社外の人であっても、「〇月〇日までにマイナンバーを提出してください」と依頼することはできる。期限までに提出しない者がいても、社員であれば何度か催告することが可能であろう。これに対し社外の人だと、催告しづらい関係であったり、催告しても応答がなかったりして、結局、マイナンバーを取得しそびれてしまうこともあり得る。そこで、社外の人のマイナンバーを取得する場合は、相手が期限までにマイナンバーを提出しないことも想定し、余裕のあるスケジュールとする必要がある。