現在の仕事以外の仕事を持ったり、非営利活動に参加したりすること。この言葉は、経営学者のピーター・ドラッカー氏が『明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命 』(ダイヤモンド社)の中で最初に用いたとされる。ドラッカー氏はパラレルキャリアが重要になる理由として「人間の方が組織よりも長命になったこと」を挙げ、1つの組織のみに頼った生き方を見直す必要が生じているとした。

 生前、多くの経営者の信奉を集めたドラッカー氏だが、この洞察はまだそれほど受け入れられていないようにみえる。比較的国内で多いと考えられるのは、地方企業が兼業の農業従事者を雇用するケースや、工場勤務者に対して減産による休業日などでの副業を認めるケースである。

 まれに有名企業でも例があり、リクルートグループの持ち株会社であるリクルートホールディングスは「リクルートの業務に影響を及ぼす懸念がない限り基本的に認めている」とし、約300人の従業員のうちおよそ1割の社員に起業などの兼業を認めているという。ワークスタイル変革を自ら推進するITベンダーのサイボウズも2012年から「会社の資産(情報やブランドを含む)を毀損しないこと」を基本条件として、認める方針を打ち出している。