ワークスタイルを変革すると、フェース・ツー・フェースでコミュニケーションをとる機会が減ってくる。それに合わせてコミュニケーションスタイルを変えることが求められる。連載3回目では、「報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)」の在り方を探っていく。

 ワークスタイル変革によって「いつでも、どこでも仕事ができる環境」を構築すると、従来の環境と比較して社員がオフィスに滞在する時間は短くなる。それに伴って、上司や部下とフェース・ツー・フェースでコミュニケーションをとる機会も少なくなるので、ビジネスの基本とされている「報告・連絡・相談(ほう・れん・そう)」の在り方を見直すことが必要になる。

 具体的には、フェース・ツー・フェースによる「ほう・れん・そう」を代替するIT(情報技術)ツールが必要になる。この代表的なツールがグループウエアである。単に、従来のコミュニケーション手段を代替するだけでなく、ワークスタイルの変化に合わせてコミュニケーションスタイルを改革することも重要だ。

グループウエアで「報告」「連絡」を代替

 「報告」は主に、部下が上司に対して仕事の状況を伝えること。つまり、上司にとって、自分の配下にある業務を見える化する取り組みである。

 業務の見える化には、グループウエアの「グループスケジュール」と呼ぶ機能が大きな力を発揮する。これは、ユーザーが設定したグループ単位で個人のスケジュールを一覧できる機能(図1)。グループは自由に設定できるので、部門をまたがったプロジェクトでも活用できる。

図1●「グループスケジュール」の画面例(サイボウズ ガルーンの場合)
図1●「グループスケジュール」の画面例(サイボウズ ガルーンの場合)
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 例えば、営業部門などでグループスケジュールを利用すれば、いつ誰がどの顧客へ訪問するかが一覧できる。個別のスケジュールには詳細な内容を記述できるので、どのような案件で営業に行っているのかも把握できる。このほか、メンバー全員の空き時間を探してミーティングを設定するといった使い方もできる。

 グループウエアシステムの多くは、外部のシステムと連携する機能を備えているので、財務的な情報も見える化できる。例えば、会計システムと連携させて、自部署の予算進捗を確認したり、顧客別や営業担当者別の売上高を把握したりすることが可能だ。つまり、部下からの報告というコミュニケーションがなくても、自分の配下にある業務を見える化できるのである。

 さらに、営業日報のような定型的な報告書を紙の文書からグループウエアに移行すれば、業務の生産性を大きく向上できる(図2)。関係者全員で情報を共有できるし、過去の報告書を検索することも容易だ。社外からノートパソコンやスマートフォン、タブレットでグループウエアを利用できる環境であれば、本来は無駄な時間である移動中に報告書を入力・閲覧することも可能になる。

図2●グループウエアに搭載した商談報告書の画面例(サイボウズ ガルーンをWebデータベース「デジエ8」と連携した場合)
図2●グループウエアに搭載した商談報告書の画面例(サイボウズ ガルーンをWebデータベース「デジエ8」と連携した場合)
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 「連絡」は主に、職場の上下関係にかかわらず、業務に関した情報を関係者に知らせることである。これには、電子メールや電子掲示板などが利用できるが、重要なことは伝達内容の機密性や緊急性、そして相手の状況によって、コミュニケーション手段を使い分けることだ。例えば、顧客からのクレームなど緊急に対応する必要がある情報を電子メールで送信しても、相手が外出中でしばらく気づかないというケースもある。

ソフトフォンのプレゼンスとの併用が有効

 このような状況で役立つのが「プレゼンス(在席情報管理)」と呼ぶ機能だ。これは、ユーザーがどのような状況にあるかを管理するもの。この機能を備えているグループウエアシステムもあるが、それぞれのユーザーが自ら情報を入力しないと更新されないものが多く、きちんと運用できているというケースは少ない。

 ソフトフォン(IP電話)を導入している企業であればシステムが備えるプレゼンス機能を併用することが理想だろう。現在ではソフトフォン・システムの多くが、社内にあるパソコンと通信し、ユーザーの状況を管理する機能を備えている。

 具体的には、(1)パソコンへのログイン状態(オンライン=在席/オフライン=不在)、(2)ソフトフォンで通話中、(3)離席中(キーボードやマウスの操作がない状態が一定時間続いた場合)――といった在席情報を表示する機能を備えている。これで相手の状況を確認してから、最適な伝達手段を選ぶことで社内コミュニケーションの生産性を大きく向上できる。

 例えば、相手がオフラインや離席中であれば、内線電話をかけても無駄なので、緊急性に応じて携帯電話や電子メールなどのコミュニケーション手段を使い分ける。通話中であれば、ほとんどのソフトフォン・システムが備えているインスタント・メッセージを使って、折り返し電話をしてほしい旨を伝えられる。

 最近は、スマートフォンに対応しているソフトフォン・システムも増えているので、社外からプレゼンスやインスタント・メッセージを利用することも可能だ。

【後編に続く】