
チーフ・データサイエンティスト
中林紀彦氏
損害保険大手の損害保険ジャパン日本興亜株式会社(以下、損保ジャパン日本興亜)が、本格的なAI活用に乗り出している。その第1弾となるのが、画像認識アプリ「カシャらく見積り」である。各社発行の自動車保険証券や車検証の画像からAIが契約内容を読み取ると、自動的に自社商品の補償内容に置き換えられるというものだ。
営業用のタブレット端末のカメラで撮影した自動車保険証券や車検証の画像を基に作成された同社の補償内容は、代理店システムに送信され、見積書作成から契約までをシームレスかつペーパーレスで行う。ユーザーは契約までの時間を短縮でき、代理店は事務作業を省力化できる。つまり両者ともにメリットを受けられる仕組みである。
同システム実現の背景には、ディープラーニングによる画像認識技術の進化がある。保険証券は各社で書式が異なるため、機械化が難しく、従来は人が契約内容を読み取って代理店システムに必要な情報を入力、見積書を作成していた。それが、AIで自動化できるようになったのである。
AI活用を推進するSOMPOホールディングス チーフ・データサイエンティストの中林紀彦氏は「ディープラーニングによる画像認識技術は日々進化しています。弊社では、現在も20を超えるPoC(実証実験)を進めていますが、画像認識、音声認識、自然言語処理などの分野ではディープラーニングの活用によって、機械学習よりも高い精度の学習効果が期待できることがわかっています」と語る。
同社では「カシャらく見積り」でディープラーニングを活用するにあたり、同社専用のAI工場「SOMPOエッジAIセンター」(以下、エッジAIセンター)を構築した。エッジAIセンターは、グループ各社から収集したデータをリアルタイム解析するためのオンプレミスのデータ分析基盤だ。クラウド上に収集されたデータを、ディープラーニング技術を活用してリアルタイム解析し、瞬時に経営に生かすことを目的としている。
なぜ、こうしたエッジ処理を行うセンターが必要なのか。そこには試行錯誤の末に獲得した、同社ならではのノウハウがあった。