バーチャルな世界で精密な試作機を作り、様々な角度から検証することで、製品の品質を向上させると同時に、開発コストを削減し、製品化までの期間を短縮する――。ICTの進化によって、そんな世界が現実になろうとしている。仮想ワークスペースに様々な部門の担当者が集まり、知見を活かした共創で問題を解決していく最先端のものづくりの現場を探ってみよう。

 多品種少量生産への対応、製品化までのリードタイムの短縮、開発コストの削減――。製品開発の現場はこれまでも厳しい要求を突きつけられてきた。最近はICT製品のコモディティ化が加速した結果、メーカー間の競争がますます激化している。よりよい製品を競合に先んじて提供できるかがどうかはメーカーの命運を大きく左右するようになった。

 もちろん製品開発現場では早くからデジタル化によるスピードアップに取り組んできた。ほとんどの製造業では設計に2次元や3次元のCADを導入しているし、3次元プリンターや設計検証を行うための「デジタルモックアップツール」を使って、試作機作りの回数を減らす試みも従来から行われてきた。

 こうした「モノを作らないものづくり」への挑戦は一定の効果を上げている。デジタルモックアップツールを使って、3次元CADデータからバーチャルな世界で3次元の試作品「デジタルモックアップ」を作り、試作機を作る回数を減らすのに成功したケースもある。

 だが、デジタルモックアップツールにも課題はある。モデルデータは3次元だがディスプレイは2次元であるため、部品の前後関係や作業空間の把握が難しかった。それゆえ、試作機を作成してみないと気付かない問題も多く発生していた。ICT企業であると同時に、ものづくり企業でもある富士通グループで、開発のためのテクノロジーを提供する富士通アドバンストテクノロジ 構造系プラットフォームサービス部の赤星龍亮氏はこう語る。

 もう1つの課題は、遠隔地のリモートデスクトップ環境では利用が難しいことだ。遠隔地の部門間協調設計においてデジタルモックアップを活用した検証を行う際、3次元データの描画処理が遅くなるため、操作性のレスポンスが悪くなり検証用途にはムリがあった。

 現在の製品開発は、設計、製造、品質保証、保守と開発に携わる一連の部門が集まって部門を超えて討議する、いわゆる「大部屋開発」が主流になっているが、そこにも課題があった。移動や調整に時間をかけて異なる部門の担当者が一堂に会したとしても、解決方法を決めることはできるが、結局、各部門に持ち帰り次回までに修正したり、あるいはそこで新たな課題が発生して次回協議の必要が生じるなどのサイクルを繰り返さざるを得ず、時間がかかっていた。

 実は富士通は5年前に発売された「UNIXサーバ SPARC M10」の開発では、デジタルモックアップを基にした開発に取り組んできた。各部署にデータを渡してデジタルモックアップを確認してもらったが、「データを渡すだけでは設計の意図が伝わりきらなかったり、CADデータから実物が想像できずどう使われるかがわからなかったため、設計者が説明に行かなければならず、タイムリーなレビューができませんでした」と設計を担当した富士通 アドバンストシステム開発本部 実装技術開発統括部の今本孝志氏は明かす。

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