第3次ブームと言われる人工知能(AI)。いまやブームの域を超え、ビジネスの現場に活用され始めている。金融機関も例外ではない。そもそも膨大なデータを扱う金融機関は、以前から業務にICTが深く入り込んでおり、既存の業務の“延長”としてAIを自然に取り入れ、さらなる効率化、高付加価値化をできる素地がある。一方、あらゆる業界にAIが広がりつつある状況下、金融サービスもあまたあるAI活用サービスの一つになってしまい、金融ビジネスの競争環境そのものが変わる可能性も指摘されている。
今、人工知能(AI)が第3次ブームと言われ、関連セミナーなども活況を呈している。ただ、今回のAIブームは、もはやブームの域を越えている。既にビジネスの現場にAIが活用され始めており、この動きは金融機関とて例外ではない。
長年金融業界におけるICT動向をウォッチしてきた富士通総研コンサルティング本部プリンシパルコンサルタントの隈本正寛氏は、「金融業界では、これまでも融資における審査などで統計モデルの活用などが行われてきました。AIの活用はその延長線上にあるものと言え、金融業界にとってAIの活用は、自然なことです」と指摘する。
分かりやすい例が、有望な取引先を発見したり、倒産を予測したり、不正を検知したりといった融資の審査に関連する業務だ。統計を活用した審査モデルがこれまで利用されており、AI活用による高度化が取り沙汰されている。コンピュータが自ら判断することでこれまで以上に処理が迅速に進むようになる。隈本氏は、「データから重要な情報を見つけ出したり、新たな価値を付加したりすることが金融ビジネスの本質です。その意味で様々な領域でAIが適用されていく可能性は大きい」と語る。
例えば、ネット専業銀行であるジャパンネット銀行では、クラウド会計サービスを提供するfreee(フリー)と提携。会計サービスのデータを活用して融資を実行するサービスを開始した。クラウド会計にはリアルタイムに企業の決済情報が登録されており、生のデータから融資の可否を判断できる。その審査にはAIが活用され、業績をリアルタイムで分析し、無担保や無保証で即日融資が可能になるという。
また、みずほ銀行はソフトバンクと提携し、AIを活用した個人向け融資を始めるという。銀行口座の入出金情報と携帯電話の支払い状況などから信用力を点数化し、最短30分で融資可能かどうかを判断する。今年中にはサービスを開始する予定だ。