データ活用の利便性をどう高めるか? 今、情報システム部門に求められている大きな課題だ。しかし、データ量が増えてデータ活用が進めば、情報系基盤の負荷も増大する。そこでパフォーマンスが低下すれば、使いづらいシステムに陥ってしまう。この相反する課題をどう解決するか。早くからデータ活用に取り組んできた旭化成では、将来の変化に対応できる課題解決の決定打を見いだしていた。
メモリー増設の限界が情報活用の足かせに
「メモリーをこれ以上増やすことができないとは…」。旭化成のIT統括部 システム運営グループ長の鈴木明氏は、ITベンダーからの回答を聞いて愕然とした。2016年の夏のことだ。
旭化成では、ERPデータをほぼリアルタイムで活用しデータ分析を実行できるSAP HANAの利便性を評価し、2011年、他社に先駆けてSAP HANAの導入を開始。その後、x86サーバーをベースとしたアプライアンスモデルを採用した。その後、当初の目論見以上にSAP HANAの利用が進み、システム部門では増大する処理ワークロードとシステム改修のイタチごっこが続いていたという。
SAP HANA導入決定から5年間を振り返りながら、同グループの塩月修平氏は状況を説明する。「SAP HANA導入前は前日のERPデータを夜間バッチでコピーして分析に活用していましたが、導入後はほぼリアルタイムのERPデータを分析レポートで利用できるようになりました。また、処理スピードも圧倒的に速かったため、当初想定した以上に多くのレポートが作られるようになりました。このようにして年々蓄積されるデータ量が増大し続ける中、古いデータをオンメモリーの対象外にするなどのチューニングによって処理に使うメモリーを確保し、なんとかシステムパフォーマンスを維持してきたのですが、もうそれも限界にきていました」
そこで、データ容量増加への対応のためにメモリーの追加を行おうとしたところ、冒頭のITベンダーからの「メモリーをこれ以上増やすことはできません」という回答に驚いたというのだ。