ITを活用した働き方改革によって、従業員の満足度を高めると共に、業務や意思決定のスピードも向上させたい。このように考える企業が最近では増えてきた。それでは具体的に、どのように取り組んでいけばいいのか。その一つのケーススタディとして紹介したいのが、2012年3月の創業100周年を機に働き方改革に取り組むヤンマー株式会社の事例。その内容を俯瞰することで、成功のポイントが何なのかが見えてくるのではないだろうか。
3つのポイントを重視し働き方改革へ
農業機械や建設機械から船舶そしてエネルギーシステム事業など、幅広い分野で日本を代表する産業機械メーカーとして知られるヤンマー株式会社。ここでは創業100周年を機に、働き方改革が進められている。
「当初はERPによる基幹業務標準化を検討していたものの、経営判断により、グローバルな情報の共有、コミュニケーション基盤の統一を優先事項として推進することにしました」とこのプロジェクトについて語るのは、ヤンマー 執行役員 の矢島 孝應氏。プロジェクトが企画されたのは2014年だったが、その当時のコミュニケーション基盤はLotus Notesによる国内中心のものであり、グループ全体で統一されておらず、社員同士の横連携が取れているとは言い難かったと振り返る。「ファイル管理についてもデータは部内で閉じられており、部外の情報を得るためには、メールで依頼しなければならないなど、煩雑さを生んでいました」。
このような連携不足を解消するため、情報共有・活用の強化に取り組み始めたヤンマーは、大きく3つのポイントを重視する方針を掲げることになる。
第1は「トップの意思をグループ全社員により迅速に伝え、徹底すること」。社長メッセージという形で社員に定期的に発信していたものの、以前は国内外の社員が同時に共有することは困難だった。
第2は「散在しているノウハウを集約し、有効に活用する」。社内共有のノウハウと言いながら結局は個人の持ち物となり、情報の存在が分からないという状況を解消することが目指された。
そして第3が「部門を越えた情報連携の迅速化により、お客様にスピーディなサービスを提供すること」である。
「例えば商品でトラブルが発生した際、事業横断での対応が必要な場合も多いのですが、情報連携に時間が掛かっていました。お客様から見れば同じひとつのヤンマー。その視点をベースに、“お客様へのサービス強化のため”情報連携における社内の壁をなくしたいと思っていました」(矢島氏)。
それではヤンマーは、これらの目標をどのようにして達成していったのか。具体的な取り組みを見ていこう。