介護施設では、入居者の転倒や体調不良などを素早く察知することが不可欠。しかし、介護は肉体的にも精神的にも重労働で、スタッフは常に不足気味だ。入居者の十分な見守りが難しく、ときには事故などの発見・対処が遅れることもある。こうした現場で役立つのが、IoTを活用した見守りソリューションだ。室内の生活音や音声を収集して分析し、異常の可能性を見つけ次第、コールセンターから本人や施設に通知する。きめ細かくスピーディーな見守りの仕組みは、激務と言われる介護業界の労働環境を改善する手段となり得る。

 日本の高齢化は今後ますます加速していく。総務省統計局の発表では、65歳以上の高齢者人口は2015年で3395万人だが、2025年には3657万人になり、全人口の30.3%を占めるようになる。

 内閣府がとりまとめた「平成28年度版高齢社会白書」でも、高齢化社会の課題が浮き彫りになっている。現役世代である労働人口は減少し続けるため、1950年には1人の高齢者を支える現役世代が12.1人だったのが、2015年には2.3人になり、2060年には1.3人になると予想されている。

 さらに追い討ちをかけるのが、介護や看護の問題だ。家族の介護や看護を理由に離職・転職する社員の数は、2012年の時点で1年間に10.1万人。そのうちの半分は、仕事を「続けたかった」と回答している。現役世代にとっては、仕事をして高齢化社会を支えるだけでなく、家族の介護や看護という問題が重くのしかかる。

 こうした中で、介護施設は厳しい状況に直面している。2015年4月に介護報酬が9年ぶりに引き下げられ、経営的にも厳しさを増している。東京商工リサーチの調査では、2016年1~9月の「老人福祉・介護事業」の倒産は累計77件に達し、最多だった前年を上回るペースとなっている。

 厳しい状況が続く中、現場で働く介護スタッフには大きな負担がかかっている。介護労働安定センターが実施した平成27年度「介護労働実態調査」では、61.3%の事業所が従業員の不足感を訴えており、前年より2ポイント悪化している。人手不足の理由の7割は「採用が困難である」という点で、その理由としては「賃金が低い」「仕事がきつい」が挙げられている。

 今の介護業界は、人材の確保が難しく、労働負荷が増大し、離職率が増えるという、負のスパイラルに陥っている。この状況を打破するためには、スタッフがより働きやすい職場を作っていくことが求められる。そうなれば結果的に労働効率が上がり、経営状況も改善されるという好循環が見込める。そのための対策の一つとして注目されているのが、入居者に対する見守り体制の効率化である。

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