モバイル、ソーシャルメディア、クラウド、ビッグデータなどのデジタルテクノロジーを活用して、既存ビジネスの変革や新ビジネスの創出につなげる「デジタル・トランスフォーメーション」が注目されている。企業はこのデジタル・トランスフォーメーションの流れに乗り、スピーディーなビジネス展開を行わないと、これからのグローバルな企業競争に打ち勝つことはできない。そして、この新たな時代に後れをとらないために、企業が検討すべきICT課題はどこにあるのか。またその解決のヒントは何なのか。NTTコミュニケーションズのクラウド・エバンジェリスト 林雅之氏と日経BP社イノベーション研究所 所長の桔梗原富夫が紐解いた。
企業戦略の一環としてデジタル・トランスフォーメーションを捉える
桔梗原 2017年は「iPhone」が発売されてからちょうど10周年です。今や、モバイルやソーシャルメディアは生活やビジネスで欠かせない存在となっています。そして、ビジネス基盤としてクラウド、ビッグデータ、IoTなどのデジタルテクノロジーの利用が広がってきました。NTTコミュニケーションズではこうした状況の変化をどのように見ていますか。
林 クラウド・エバンジェリストという立場上、企業のCIOや意思決定層の方々とお話しする機会が増えています。そこで感じるのは、デジタルテクノロジーを活用して新ビジネスを創出するデジタル・トランスフォーメーションの関心が高く、企業戦略の一環として捉えている点です。IT部門のほか、デジタル・トランスフォーメーション推進の専門部署を新設する企業もあり、そうした部門の方とIoTやAIについて意見交換することもありますが、デジタル・トランスフォーメーションを活用してどのように新ビジネスを創っていくのか、具体的に検討している企業はまだ少ないのが実情です。
桔梗原 皆さん、手探りの状況というわけですね。そうしたなかで、ドイツが推進する「インダストリー4.0」のように、日本の製造業もデジタルテクノロジーを活用したビジネスの革新がいよいよ本格化しそうです。
林 おっしゃる通りです。日本の製造業などは、現行システムの安定運用とあわせて、グローバルな競争力を強化するためにもデジタルテクノロジーの活用が求められています。そうしたなか、デジタルテクノロジーをビジネスで活用するための提案や、デジタル・トランスフォーメーションの展開をサポートする期待も高まっています。当社としても、企業がこれらの取り組みを実現させるために、ICTプラットフォームを含めたトータルな提案が重要になってきていると感じています。具体的には、既存の基幹系システムのクラウド移行やネットワークの見直しまでを視野に入れ、デジタル・トランスフォーメーションを推進するトータルな提案が増えています。