急速な勢いで拡大し続けている日本企業の海外進出。海外への直接投資は過去最大規模になっている。その一方でビジネスのグローバル化は、日本企業に新たな課題も突きつけるようになった。これらの課題に対応するため、ビジネスを支えるICTシステムはどうあるべきなのか。グローバル企業のICTシステムが満たすべき要件を示したうえで、その具体的な実現方法を紹介する。
拡大し続けている日本企業の海外進出。「グローバル化」の必要性が語られるようになってすでに久しいが、その取り組みは現在も着々と進められている。それを裏付けているのが、財務省が2016年5月に報道発表した「平成27年末現在 本邦対外資産負債残高の概要」である。海外に対する2015年の直接投資(海外進出のための投資)は151兆円を突破。これは過去最大であり、20年前の5倍近い金額になっているのだ(*)。
国内需要が減少し、海外に活路を見出さざるをえない状況では、これは自然な流れと言えるだろう。しかしこのような「かつてない規模のグローバル化」によって、日本企業は新たな課題に直面するようになっている。
第1の課題は、海外展開に求められるスピードが速くなり、対応する意思決定や投資の早期化が必要なことだ。以前は市場の変化スピードが比較的遅く、じっくりと時間をかけて計画を立案したうえで、海外進出することが可能だった。しかし最近では市場の変化が激しく、短期間での対応が求められるようになっている。また変化に対応するため、拠点の統廃合やM&Aが必要なケースも増えてきた。これらをスピーディーに全体最適で進めるためには、これまで以上に強力なガバナンスが必要なのである。
第2はグローバルな競争が激化していること。いくら良い製品・サービスを生み出しても、それをスピーディーに世界展開できなければ、利益を確保することは難しくなっている。短期間で競合が現れ、価格競争に巻き込まれる可能性が高くなっているからだ。
そして第3が、海外展開の規模の拡大に伴い、各拠点で満たすべき固有の要件も増大してきていることだ。例えば個人情報の扱いに関するルールは国や地域によって大きな差があり、その内容も急速な勢いで変化しつつある。このような状況にも適確に対応しなければならないのである。
当然ビジネスを支えるICTも、これらの課題への対応が求められる。それでは具体的に、どうすればよいのだろうか。