コールセンターやヘルプデスクは、顧客満足度の向上に大きな役割を果たす。そこでは顧客からの問い合わせに対し、短時間で的確に回答する必要があるが、高度な業務知識を要求される場合もある。そのため、オペレーターのスキル育成に時間がかかる、属人性が高くなるという課題を抱えている。しかし最近はAI(人工知能)を活用することで、こうした課題も解決できるようになってきた。それではAIはコールセンターやヘルプデスクにどのような革命をもたらすのかを見ていこう。
顧客からの各種の問い合わせを受け付けるコールセンター(インバウンド)やヘルプデスクは、顧客満足度を高めるうえで重要な役割を果す。顧客からの問い合わせに迅速かつ的確に対応するのが目標だが、これは決して簡単ではない。多くのコールセンターやヘルプデスクは、主に二つの課題を抱えている(図1)。
第1の課題はヒューマン系の課題である。オペレーターのスキル平準化が難しいのだ。例えば、多くのコールセンターやヘルプデスクでは、顧客からの質問に迅速に対応するため、過去の問い合わせ対応記録に基づくFAQ集を用意しているが、これを的確に検索するには「どのようなキーワードを組み合わせればいいのか」を瞬時に判断しなければならない。また同じことを意味する複数の表現が存在する場合には、そのいずれを使えば的確なFAQにたどり着けるかも考える必要がある。
新人オペレーターにこのようなスキルを身につけてもらうには、当然ながら教育にコストも時間もかかる。しかも、コールセンターやヘルプデスクではオペレーターの定着率は必ずしも高くなく、オペレーターのスキルが属人化し、なかなか平準化できないという悪循環に陥ってしまうのだ。
ヒューマン系の課題の裏側には、第2の課題である技術系の課題が存在する。例えば前述のFAQ検索に関しては、オペレーターによる正解のFAQ選択の時間を短縮できるシステムの実現が難しいという背景がある。またスキルの平準化が難しいのは、オペレーターのノウハウを共有する仕組みがないからだともいえる。
しかし最近では、これらの課題をAIで解決することが可能になってきた。具体的に見ていこう。