ヒトとコンピュータが短文で会話する「チャットボット」サービスを強化する動きが相次いでいる。特に、多様で複雑な商品・サービスを扱う金融機関が問い合わせ対応やセールスに活用しようというケースも出てきた。チャットボットとは、チャット(会話)に自動応答する機能(プログラム)のこと。チャットボット自体は以前からあったが、最新のチャットボットは機械学習をはじめとするAI(人工知能)技術を取り入れて、より自然できめ細かな会話を行えるように進化。金融機関の顧客対応に大きな変革をもたらす可能性が広がってきた。

 AIチャットボットの利点は、会話という親しみやすいUX/UI(ユーザー体験/ユーザーインタフェース)によって適切な情報を利用者に提供できることにある。例えば、現在のネット検索サービスでは、利用者が求める検索結果を得るまで、キーワードを丹念に取捨選択して検索を繰り返すような試行錯誤が必要だが、AIチャットボットでは、より自然に知りたいことを検索できる。

 これまでのチャットボットでは、顧客からの問い合わせに対して、あらかじめプログラムされた文例を組み合わせて返答パターンを作る、というものだった。これに対してAIチャットボットは、過去に蓄積した顧客からの多数の質問と回答のパターンを機械学習し、顧客からの新たな問い合わせに対して、スクリプト(台本)編集エンジンで作成した回答とマッチングした上で顧客に返答するため、より適切な回答ができる。

 AIチャットボットを活用すれば、チャットというインターフェースを通じて、利用者のニーズを深掘りしながら、多角的に情報を提供することが可能になる。「今日は何を調べますか?」といった質問をシステム側から発し、顧客からの回答に対してさらに追加の質問を繰り返し、顧客の潜在的な要求を掘り下げることも可能だ。

 「LINE」に代表される対話アプリの普及によって、チャットのUX/UIに親しむ人は急速に増えている。特に若年層では電子メールよりも身近なコミュニケーション手段になっている。

 こうした流れを受けて、チャットを顧客からの問い合わせ対応や商品説明のチャネルとして活用しようという気運が急速に盛り上がっている。特に期待されている領域の一つが、商品の種類が多い上に、一つひとつが複雑な金融商品・サービス分野の問い合わせ対応だ。本来はコールセンターが受け付けた電話や問い合わせの電子メールに対して人間が回答することが理想だが、コスト面から24時間365日対応は難しい。Webサイトに商品・サービスの紹介やFAQ(よくある問い合わせとその回答)を掲載すれば24時間365日対応は可能だが、一方的な情報提供に終わり、顧客が本当に知りたい情報を提供できているとは限らない。

 これに対してAIチャットボットを使えば、24時間365日、顧客の質問の意図をくみ取って回答するコールセンターのような問い合わせ対応をある程度自動化でき、顧客満足度を上げられる。こうしたことからAIチャットボットに関心を示す金融機関が国内外で増えている。

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