インターネット経由の販売が増え、体制刷新が急務に
土煙を上げながら、ごうごうと音を立てて採石場を走る巨大なダンプトラック。大量の土砂を押し寄せて進むブルドーザーや、現場のあちこちで首をもたげるショベルカー――。こうした建機の領域で世界トップクラスのシェアを誇るメーカーが、米キャタピラー社である。
約190カ国で販売される同社製品の中核ブランドは「CAT」。これは土木・建築業界では知らない者がいないほどの有名ブランドであり、業界各社のビジネスに欠かせない製品の1つとなっている。
また、キャタピラーはIoT活用の先進企業としても知られている。そもそも同社がIoTに本腰を入れ始めたのは2016年のこと。きっかけは、ある製品販売戦略上の危機意識だった。
先に紹介した通り、キャタピラーの中核製品は大型の建機だが、多様な製品ポートフォリオの中には小型の製品も多数存在する。同社は、この小型製品の販売・流通に、ある課題を抱えていたという。
例えば、現在はスマートデバイスの普及によって、「インターネットで物を買う」という行為がごく当たり前のものとなっている。この状況のもと、キャタピラーの小型製品も、従来型の代理店経由の販売に加えて、EC経由の販売が急増。自社ECサイトのほか、Amazonなどの外部サイトでの販売が増加していくなかで、顧客対応品質や納期のばらつきが出始めており、それらの改善とガバナンス強化が重要ミッションになっていたのである。
そこで同社は、この問題を解消するためにはIoTを活用することが有効だと考えた。具体的な取り組みの内容を、次ページ以降で見ていこう。