クラウドに幻滅しつつも、オンプレ回帰にもリスクが伴う
現在、ビジネス成長を支えるためのITシステム構築に「クラウドファースト」を掲げる企業は少なくない。しかし、先行してクラウドを活用してきた企業を見ると、必ずしも当初期待した狙いや効果が実現できていないケースも多い。
例えば、コストの削減はその1つだ。2017年8月に公表されたIDC Japanの調査(※)では、オンプレミスとクラウドの総コストに関する調査があるが、驚くべき結果が示されている。「オンプレミスシステムと比較して、SaaSやIaaSを利用したときの5年間の総合計コストについて、どのように考えていますか?」という質問に対して、「オンプレミスとクラウドは変わらない」との回答率が最も高く、さらには、「クラウドの方が高額になる」という回答が、「クラウドの方が安価になる」との回答を上回っているのだ。
コストの側面ばかりでなく、標準化が進んでいた欧米と異なり、日本では、個々の現場特有の業務に依存する形でシステムが構築されていることも多く、クラウドにそのまま既存のシステムを持ち込むと自社要件に合わず、クラウド化を断念するケースもみられる。ほかにもパフォーマンスの懸念などから、一旦クラウド化したシステムをオンプレミスに戻す事例も出ているという。ただしオンプレに戻したところで、すべて解決するわけではない。市場の変化に追従できるスピードやスケーラビリティを確保することは容易ではないからだ。このような観点から、クラウドなのかオンプレなのか。この問題に悩んでいるIT担当者も少なくないだろう。
デジタル全盛時代、企業がリスクを減らしつつ、最大限のメリットを得るために、どのようなITシステムを選択すべきなのか。そのあるべき姿について、IDC JapanとITベンダーのキーパーソンに話を聞いた。次ページ以降では、その内容を紹介する。