メリットが多いHCI環境にも思わぬ落とし穴が…
パブリッククラウドやプライベートクラウド、オンプレミス――。様々なシステム形態をいかに適材適所で使いこなしていくか。これは多くの企業にとって重要なテーマとなった。最近は、パブリッククラウド上に移したシステムを、長期的コストやワークロードの適性などの観点から、再度オンプレミスに戻すという、いわば“揺り戻し”ともいえる動きも少なくない。
そうした選択を促進する1つの要因となっているのが、「ハイパーコンバージドインフラストラクチャー」(以下、HCI)の普及だ。サーバー、ストレージ、仮想化環境を統合化し、単一のアプライアンスにパッケージングされるかたちで提供されるHCIは、システムの迅速な導入や柔軟な拡張を可能にし、運用管理の負荷軽減にも寄与するITインフラとして注目を集めている。
ただし、HCIにも “弱点”が存在する。それはバックアップの問題だ。一般にバックアップは、その処理がシステムに及ぼす負荷が小さくないため、1日1回、夜間などに実施することが多い。そうすると、仮にシステム障害などが発生して、いざバックアップデータをリストアしても、システム的に復元できるのはせいぜい前日夜の状態にすぎない。つまり、それ以降に生じた業務の復旧作業は、人手でやらなければならないわけだ。
特にHCIの主要な用途の1つであるVDI(Virtual Desktop Infrastructure)環境だと、その問題はさらに大きくなる。何千とあるVDIの環境については、バックアップ用のストレージの容量の問題もあり、「マイドキュメント」などのデータのみをバックアップするという運用をとる企業も少なくない。こうしたケースでは、問題発生後にリストアを行ったとしても、現場のユーザーがそのデータを利用して業務を再開するためには、復旧したVDI環境でOSやアプリケーションの再設定に多大な時間を費やさなくてはならないのが現状だ。
つまり、HCIを導入したとしても、バックアップに関してはシステムに及ぼす負荷や容量の問題がネックとなり、サービスレベルは一向に上がらない。では、HCIの“弱点”であるバックアップの問題は、どう解消すればよいのか。