6600万顧客への課金/決済業務を支えるリアルタイムビリングシステム

 苛烈な競争が続く携帯電話業界において、約6600万人の契約者を擁するNTTドコモは現在、キャッシュバックなど一過性の競争施策から脱却し、顧客との長期にわたる関係の中で価値を提供し続けていく競争モデルへの転換を進めている。2014年6月に提供を開始した新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」や、2015年3月にスタートしたブロードバンドサービス「ドコモ光」などは、その代表的な取り組みだ。

 多様化が進む顧客ニーズに応えていくために、同社はこの競争モデルをさらに推し進めるとともに、さまざまな分野のパートナー企業とのコラボレーションを強化し、新たな付加価値を創造する「協創」の取り組みを「+d(プラスディー)」と名付けて推進している。パートナー各社のサービスと、NTTドコモのビジネスアセットである「送客(プッシュ型情報配信、プッシュメール、ポータル/検索)」「基盤(アカウント、ポイント、顧客データベース)」「決済(料金収納代行、クレジットカードなど)」を組み合わせることで、さらなる商流加速を図るのが狙いだ。

NTTドコモ 情報システム部 料金システム担当 担当部長の嶌村友希氏
NTTドコモ 情報システム部 料金システム担当 担当部長の嶌村友希氏

 この取り組みを下支えする同社基幹システムの1つが、料金システム「MoBills(モービルス。Mobile Billing system)」である。同システムの特徴を、NTTドコモ 情報システム部 料金システム担当 担当部長の嶌村友希氏は次のように説明する。

 「MoBillsの最大の特徴は、お客さまの通話/通信/決済といった情報をリアルタイムに集計して課金する"リアルタイムビリング"を実現している点です。例えば、新料金プランの目玉の1つは家族/グループ間でデータ通信量をシェアできることですが、これはMoBillsのリアルタイムビリングによって実現されています。また今後、+dの取り組みやIoT(Internet of Things)の進展においても、リアルタイムビリングが重要な役割を果たすと期待しています」

 同社は、このMoBillsのデータベース基盤を「Oracle Exadata」で刷新し、その一部が2014年9月に稼働を開始している。NTTドコモは、なぜ、どのようにしてOracle Exadataを選んだのか? 嶌村氏らプロジェクト関係者の話を基に、その選定プロセスを明らかにする。

リアルタイム化による負荷増大、複雑化によるコスト増大が大きな課題に

 NTTドコモは、MoBillsの前身となる料金システムを、かつてはメインフレームで構築/運用していた。当時のシステムで行われていた業務は通話や通信の料金計算、請求書発行がメインであり、主な処理は1カ月に一度の頻度で行われるバッチ処理であった。

 このシステムに対して、同社は2007年6月に抜本的なシステム構造改革を行い、インフラ基盤をハイエンドUNIXサーバ上のOracle Databaseに移行。通話/通信量を基に請求額をリアルタイムに算出して顧客が参照可能にする機能が付加された新システムは、それまでとは使われ方も処理量も全く異なるシステムへと変ぼうを遂げた。

 以降、決済サービス基盤としてもNTTドコモのビジネスを支えてきたMoBillsだが、稼働開始から歳月を経る中で、いくつかの課題が浮上する。

NTTドコモ 情報システム部 料金システム担当 担当課長の井上晶記氏
NTTドコモ 情報システム部 料金システム担当 担当課長の井上晶記氏

 その最大のものが「システム負荷の増大」である。回線契約数の増加に伴うトラフィック量の増大や新サービス追加に伴うアプリケーションの増加などにより、旧システム基盤の性能は徐々にひっ迫していった。情報システム部 料金システム担当 担当課長の井上晶記氏は語る。

 「現在、当社が提供しているサービスには、MoBillsによるリアルタイムビリングによって初めて成り立つものが少なくありません。例えば、『利用料が一定額を超えたら、その月のサービス利用を停止する』『データ通信量が既定量を超えたら、通信速度を制限する』といったサービスは、MoBillsがあるからこそ実現できるものです。お客さまにご満足いただけるようサービスの拡充を進めるにつれ、MoBillsで必要となるハードウェアリソースも増加していきました」

 この問題への対応として、NTTドコモは順次、システム設備の増強を進めるが、それによる「コスト負担の増大」も大きな課題となった。ハードウェア増設によるファシリティコストの肥大化、ハードウェア台数の増加やアプリケーションの追加により複雑化が進んだシステムの監視/運用管理コストの増大が深刻さを増していったのだ。

 また、さらなる顧客満足度の向上を目指した新規事業/サービスが検討される中で、それらのスピーディな展開を可能にする拡張性や柔軟性の高さも求められていた。

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