働き方改革の失敗はIT部門の責任ではない
最近はテレビやネットニュース、新聞など、いたるところで「残業削減」「労働環境改善」といった言葉を見かけるようになった。この状況の下、働き方改革の重要性はかつてないほど高まっている。ITはそのための必須の武器であり、奔走するIT部門は多いだろう。
だが、単にソリューションを導入するだけで、成果は得られない。事実、多くの企業が狙ったほどの成果を上げられずにいる。
特に「営業部門の働き方改革」には課題が多い。これまで多くの企業が、生産性向上や現場担当者の負荷削減を目的として、様々なソリューションを導入してきた。ところが現実には、導入によってかえって現場の作業を増やしてしまったり、スムーズな業務の進行を妨げてしまっているケースが少なくないのだ。
例えば、CRMとグループウエア、スケジューラーのデータが同期していなかったり、基幹システム上のデータを取り出すことができず、会議などの際には、別々のデータを付け合わせて資料を作成し直さなければならないといったケースはままある。これらの問題の多くは、営業部門が使う様々なソリューションが、導入時の個別最適で組み上げられてきたため、一連の業務の流れまでを考慮しきれていないことが原因となっている(図1)。
誤解のないよう説明しておくと、これはツールを選定したIT部門のせいではない。多忙なIT部門が、営業部門の業務内容を把握できるレベルには限界がある。加えて導入期間短縮、コスト削減といった経営層の要請も満たす必要がある中では、IT部門に全責任を押しつけるのはお門違いといえるだろう。
営業部門の働き方改革を成功させたければ、営業部門とIT部門が密に連携することで、最新の業務実態に即したシステム環境を整備することが必須となる。では、そのシステムはどのようなものか。具体例を基に考えてみよう。