メーカーは製品の付加価値をどう高めるか
IoTは国際競争を勝ち抜く上で格好の武器になる? 高輝度プロジェクターでシェア世界1位のパナソニックは、既存製品をIoTデバイスに生まれ変わらせた。ハードの付加価値を高めるソリューションを模索中の国内メーカーにとって、サービス革新で一段のシェア拡大を目指すパナソニックの挑戦は大いにヒントになる。
国際競争力を高めるためのパナソニックの選択とは
マリオに扮した安倍晋三首相の登場に沸いたリオデジャネイロ五輪の閉会式。スタジアムのフィールド全面に映写された真っ赤な地色が次第に形を変え、白地にまん丸の日の丸を浮かび上がらせる。さらに、ARIGATO(ありがとう)やOBRIGADO(ポルトガル語のありがとう)といった文字を映し出し、東日本大震災で世界中から寄せられた支援に多言語で謝意を示した。50カ国以上で放映されたこの演出を支えたのは、パナソニック製のプロジェクターだった。
パナソニックは高輝度以上のプロジェクターで世界トップシェアを誇る。五輪のワールドワイド公式パートナーとして知名度も高く、同社の地位は揺るぎないように思える。
だが、現実は甘くない。華やかさと迫力を競うエンターテインメントや、人の注目を引き付けるデジタルサイネージの需要を見込み、国内外の大手メーカーがシェアを奪い合っている。
「製品単体では競合との差異化を図りにくくなってきた」。パナソニックAVCネットワークス社の北川和之サービスサポート部部長は近況をこう説明し、続ける。「シェアを維持・拡大し事業を成長させるには、付加価値が高いソリューションが不可欠になっている」。
The show must go on―映像の停止や劣化は絶対にあってはならぬ。こうした理念の下、パナソニックが力を入れてきたのがプロジェクターのIoT化だ。次ページからは、同社のIoT活用に向けた挑戦を追っていく。