新しいマーケットの獲得は成長鈍化を打破する唯一の方法
今日、企業のIT活用は高度化の一途をたどっている。なかでも金融業界で今注目を集めているのがFinTechだ。ニッセイ情報テクノロジー株式会社(以下、NISSAY IT)において、次世代R&D室と呼ばれるトップ直属組織で最新テクノロジーの潮流を調査、社内提言する田村隆行氏も次のように語る。
「当社ではFinTechをさらに焦点を絞って”InsurTech”(インシュアテック)と定義、IoT、データ分析・AI、ブロックチェーンなどさまざまな要素技術を追いかけています。その中でもAPI関連テクノロジーは金融業界で導入の気運が高まってきました。欧州では、オープンイノベーションの一環としてオープンAPIの実装が義務づけられるとともに、日本でも、金融庁がワーキンググループを立ち上げ、全銀協がガイドライン策定に入るなど、オープンAPIをめぐる動きは活発です」
その背景には企業の成長鈍化へのもどかしい思いも見え隠れする、と日本CA株式会社 APIマネジメント・ソリューション営業部 シニア・プリンシパル 武田太氏は語る。
「欧米銀行大手のアニュアルレポートでは、世界は先進国を中心にこの先人口減少に直面し、市場は先細りするだろうと未来予測は悲観的です。加えて、破壊的な新規参入者が業界外から登場、競争は激化するばかり。これを打破する唯一の方策が新しいマーケットの獲得です。そこで、オープンAPIで眠れる宝の山であるデータを社内外に解き放ち、部門や組織を超えたコラボレーションを実現、次の事業柱を育てようというわけです」
ただし、そこには一抹の懸念もある。セキュリティリスクだ。オープンAPIに着目し始動したベンチャーも出てきてはいるが、その使い道はまだデータ参照にとどまっている。ユーザとしてはデータが見られるだけではうれしくない。データ更新まで実現してこそ技術革新ではないか。しかし、ニッセイ情報テクノロジー株式会社 インフライノベーション事業部 ビジネスイノベーション室 上席プロジェクトマネジャー 津田和典氏は「二の足を踏んで当然」と口火を切り、言葉を続けた。