欧米に後れをとる日本企業のグローバル展開
少子高齢化による市場の縮小などに伴い、「グローバル展開」があらゆる日本企業の重要戦略となっている。また、新興国の台頭など、ビジネス環境がめまぐるしく変化するなかでは、適切なグローバル展開のアプローチも大きく変わりつつある。こうしたなか、ICTはどんな役目を果たすべきなのか。東京大学の元橋 一之教授に聞いた。
――企業のグローバル展開のあり方はどのように変化してきていますか。
元橋教授 GDPという尺度でとらえれば、OECD(経済協力開発機構)加盟国とそれ以外のいわゆる新興国と呼ばれる国々の比率は現在、6対4という状況ですが、これが2030年には4対6に逆転するといわれます。そうした意味では、成熟した先進国市場はもちろん、中国やインドをはじめとする新興国にいかにアプローチしていくかが、現在のグローバル戦略の重要テーマといえます。
この流れを踏まえて、特に2000年ごろから、企業のグローバル展開の内実は大きく変化しつつあります。具体的には、製造業を中心とした「生産拠点」の進出から、現地マーケットを意識した「販売拠点」の進出への移行です。
販売活動を行うには、現地の状況を把握することが不可欠です。そこで、ノウハウが豊富な現地企業のM&Aや、現地企業との合弁会社の設立などが活発化。また同時に、研究開発の拠点を各国に立ち上げるケースなども増えてきています。
ただ、この傾向は欧米企業で顕著で、日本企業はやや遅れ気味というのが実情です。私は、そこに日本企業のある特性が関係していると考えています。