PBXのリプレースに際してBCP対策強化が課題に
昔も今も、業務上の中核的コミュニケーション手段であり続ける「電話」。多くの企業・組織がPBXを設置して、その運用を行ってきたが、ここへきてそのあり方を見直す動きが加速している。
大きな理由の1つが、東日本大震災を機に意識が高まった「BCP強化」だ。その後も2016年の熊本地震、2017年7月の九州北部豪雨など、様々な災害を経験した日本において、「自前で保守運用が必要」というPBXの“弱点”が、課題となっている。
自前のPBXに頼らず、万一の災害にも強い音声通話手段を確保する――。この動きは、一般企業のみならず自治体でも進んでいる。福島県南西部、会津若松市から約45kmの位置にある南会津町も、その一例である。
2006年3月に田島町、舘岩村、伊南村、南郷村の合併によって誕生した南会津町は、「みんなの力は地域の力、みんなで創る協働のまちづくり宣言」の下、働く環境の整備や地場産業の振興、子育てや介護、医療、生活の支援といった取り組みを進めている。「こうした新しいまちづくり施策の一環として、築50年が経過した役場本庁舎の建て替え・移転も検討。その最大の理由が、住民の安全・安心な暮らしを支える『防災拠点』としての機能の強化でした」と南会津町の渡部 正義氏は振り返る。
特に、電話環境の見直しは重要ポイントだったという。というのも、南会津町役場本庁のPBXは、長年の使用を経て老朽化。安定性と機能面の両方で、十分な質が担保しにくくなっていたからだ。
また、2011年の東日本大震災では、南会津町では大きな被害はなかったものの、近隣の福島県内の自治体ではPBXやサーバーなどのシステムのダウンも経験。復旧作業に多くの手間とコストがかかったほか、その間は住民サービスも部分的に止めざるを得ない状態だったという。「PBX自体がダウンしてしまうと、緊急時にその対応のための人員を確保するのは難しいのが現実のところでした。そこで私たちは、庁舎リニューアルを機に、BCP強化を目的とした、新たな音声通話環境を検討することにしたのです」と渡部 正義氏は述べる。