エンジニアの足かせとなるディープラーニング開発の課題

 AIやディープラーニング(以下、深層学習)は、今や単なるテクノロジーの域を超え、企業の事業構造をも変えうる最重要キーワードの1つとなった。画像認識によるピッキング自動化や自動運転支援、インフラ点検、また音声認識・言語処理によるコンタクトセンター強化など、多様な分野での可能性が注目を集めている。深層学習で自社の製品やサービスを強化するため、日夜アルゴリズム開発に取り組むエンジニアは多い。

 だが、深層学習を始めるに当たり最初に直面するのが、開発環境をどう用意するかという問題だ。

 そもそも膨大なデータを扱う深層学習の開発環境には、圧倒的な高速並行処理能力が求められるため、従来の画像をオンチップで処理するPCではなくNVIDIA社製に代表されるGPUを搭載したマシンを用いることが一般的だが、その手配や運用は一般的なIT機器とは大きく異なる。

 例えば、PCの手配に際して、通常のオフィス用PCのようなIT機器と同じ調達スキームを踏襲できないことが多い。そのためエンジニアが自らWeb通販で購入したり、急ぎで必要な場合は、家電量販店でGPU搭載のゲーミングPCを購入したりするケースも多い。開発に専念したいエンジニアにとっては、「余計」な労力を強いられることになる。しかも苦労して購入したマシンのスペックが実際の深層学習の開発に適さず、再度購入するケースも散見される。

 また、そうして調達したマシンもそのままでは使えない。環境構築も自ら行わなければならないためだ。OS・GPUドライバー・ミドルウエア・深層学習用のフレームワークなど、多様なソフトウエアを最適なバージョンで導入していく必要がある。時として海外のWebサイトやコミュニティで情報を得ながら作業する必要も生じるが、説明が親切とはいえないサイトも多い。結果として、環境構築に数カ月程度を要するプロジェクトも少なくないという。

 このように、深層学習環境の構築には多大な労力が必要なため、本来ならばアルゴリズムの開発に費やせるエンジニアの時間は大きく奪われている。この問題を解決するにはどうすればよいのか。次ページ以降で、その方法について考えてみたい。

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