ビッグデータ活用、コンプライアンスがアーカイブの必要性を高める
今、テープストレージが復活しつつある。その背景にはいくつかの動きがある。
まず「ビッグデータ」と「デジタルコンテンツ」の潮流である。日々の業務の中で、テキストデータのみならず画像や音声などのデータが大量に生成されるようになった。さらに範囲を広げて見てみると、アーカイブといわれるカテゴリーのデータが飛躍的に伸びていることに気づく。アーカイブデータとは、消せない・消したくないデータのことで、社内資産/コンプライアンス面からは、設計資産、CAD、製造ログ/履歴管理が該当し、分析/研究分野では、ゲノム解析、衛星/気象、保険/金融業界では、金融/保険証書データ、証拠画像保管など多岐にわたり、ますます増え続ける傾向にある。そして、その保存先としてテープ(磁気テープ)を選択する企業が増えている。
アーカイブデータが増えている背景には、たとえば、製造業では製品の設計、製造、検査などに関わる情報の長期保存が求められるようになったことがある。製品の不具合があった場合、こうした情報は重要な判断材料となる。PL訴訟などの法的な争いに発展したときには自社の主張を支える材料にもなる。建設業を例にとると、まずCADなどの設計図がある。施工途中でも多様なデータが発生し、工事の節目では施工作業の品質を確認するために何枚もの写真を撮影する。こうした記録は業務を円滑に進めるための共有情報だけでなく、施主に対する説明資料としても活用される。
さらに、建築物の見えない部分については時間が経過しないと品質を評価できない場合が多い。10年以上が経過してから、施主からクレームが寄せられることもある。場合によっては当局から古い資料の提出を求められることもある。そんなとき、施主や当局が納得できるような回答ができるかどうか。それは、建築会社の信用に関わる問題だ。きちんと回答するためには設計や施工に関する情報を保存しておく必要がある。
ビッグデータ活用の視点からも、長期保存の重要性が高まっている。今は単なるデータの塊でも、いずれ新しい解析手法が生まれれば宝の山になるかもしれない。そんなときのためにデータを長期保存している企業もある。
ビッグデータ活用や顧客への説明責任、コンプライアンスなどの観点から、データアーカイブに対するニーズはかつてないほど高まっている。そして、大量データ保存の最適な保存手段として再び脚光を浴びているのがテープストレージだ。
20年前、10TB(テラバイト)の容量を持つ大型のテープストレージシステムは数億円かかる高額な装置だった。現在、8.5TBのデータを保存できるハイエンドテープ1本の価格は数万円台である。この劇的な集積度の向上など、世界が注目する「テープの技術革新」をリードしたのがオラクルと日本企業である。同時に、テープに保存されたデータを検索・閲覧できるサービスもすでに提供されており、利便性も大きく向上している。テープストレージによるアーカイブはどこまで進化しているのか。次ページ以降で解説しよう。