金融とITの融合で新たなサービスを生み出す「Fintech」に注目が集まっている。スマートフォンやクラウドなど最新の技術を活用することで、金融サービスを容易に開発できるようになったことが背景にある。魅力的かつセキュアな金融サービスの開発においてカギになるのは、金融機関の事業創出やサービス開発のアイデアに、ベンチャー企業の機動力やITベンダーの知見を融合させることだ。最新動向を解説する。

 ITを活用して新たな金融サービスを生み出すFintechへの注目度は高い。関連するセミナーやイベントには、金融業界や保険業界などから多くの関係者が参加し、活況を呈している。しかし「その取り組みには拡がりが見えるものの、濃淡がある」と国内外のFintechの動向に詳しい富士通総研 第一コンサルティング本部 金融・地域事業部 シニアマネジングコンサルタントの隈本正寛氏は指摘する。

 「金融機関は、Fintechが経営に大きなインパクトをもたらすと考えており、メガバンクや大手保険/クレジットカード会社のみならず、昨今では地方金融機関においても情報収集ばかりでなく本格的に取り組む金融機関が多く見受けられます。その一方で、何から取り組めばよいか分からないといった悩みを持つ金融機関もいらっしゃいます」(隈本氏)。

 Fintechが近年、急速に注目を集めた背景には以下の2つの要因が考えられる。1つは、米国において、ミレニアル世代と呼ばれる2000年以降に成人を迎えた世代の伸長があることだ。日本とは状況が異なるが、米国では同世代が人口の4分の1を占めるようになっている。そこで、若年層に対して、デジタルサービスを駆使してアプローチしていくことが今後は業種を問わず重要となってくるというわけである。

 もう1つの要因は、デジタル技術そのものの進化だ。現在のスマートフォンと10年以上前のスーパーコンピュータをその演算能力で比較した場合、現在のスマートフォンは同等もしくはそれ以上の性能を持つようになっている。多くの人が高性能なコンピュータを保有するようになっていることから、サービスにおいても、ネット上の世界とリアルな世界をシームレスにつなぐような高度化が求められている。また、ウエアラブル端末によって、よりユーザーの身近な空間においてデジタルサービスを活用できる機器も普及し始めており、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)のような技術も利用が広がりつつある。

 さらに、クラウドサービスの普及は、今後の金融ITシステムの提供のあり方を大幅に変革する。「従来のビジネスモデル、つまり大型の汎用コンピュータを整備し、各地に支店を構えてATMを提供するというスタイルが今後大きく変化する可能性があります。例えば、Apple Payやおサイフケータイに代表されるモバイル決済によるキャッシュレス化が日本でも本格的に受け入れられれば、ユーザーはスマートフォンだけで全ての決済が済んでしまいます。このような世界では、金融サービスを手軽に利用できるスマートフォン向けアプリケーションが、クラウド上で即座に提供される環境が必要となるでしょう」と隈本氏は語る。

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