デジタル時代を迎えて、顧客へのパワーシフトは加速している。デジタルマーケティング分野のソリューションを提供するサイトコアの安部知雄氏は「顧客は企業と同等またはそれ以上の情報を持ち、少しでも不快な体験をすると離れてしまいます。限られた例外分野を除けば、顧客の選択肢はいくらでもあるからです。離れた顧客は、二度と戻ってこない可能性が高い」と指摘する。
このような時代において、顧客体験(CX:Customer eXperience)の重要性は増すばかりだ(参考資料:「CXへの投資でROIが3倍になることが判明した調査報告」のダウンロードはこちら)。ただ、現状はどうだろうか。
消費者と直接つながってビジネスを展開するネット企業の場合、CXへの取り組みは比較的進んでいる。Webサイトが使いにくければ、多くのユーザーが離脱してしまう。CXのレベルが業績に直結するとなれば、経営者の力も入るはずだ。ただし、あくまでも「比較的」である。ネット企業でも、WebサイトやメールなどのCXがあまり考慮されていないケースは多い。1ユーザーとして、不満を感じた経験を持つ人は多いのではないだろうか。
B2B企業でも同様の課題がある。顧客向けに複数のWebサイトを展開している企業は多い。例えば、顧客の営業担当者向けサイト、マーケティング担当者向け、技術者向けサイトという具合だ。これらの使い勝手がまったく異なる、あるいは一貫性に欠けているケースをよく見かける。顧客の営業担当者が技術情報を見たいとき、技術者向け画面の操作感が大きく違っていれば戸惑うだろう。
「CXの不備に対して、多くの顧客がいらだっています。企業に対してクレームを寄せた顧客は、問題解決後に再び付き合ってくれるかもしれません。しかし、多くの顧客は何もいわずに立ち去るのみです」と語るのは、アバナードの高橋秀氏。アバナードはアクセンチュアとマイクロソフトが設立した戦略的な合弁企業であり、世界中でビジネスを展開している。
CXの水準が低ければ、大きな機会損失につながる。経営者やマーケティング責任者は、改めてこうした認識を持つ必要がある。次ページ以降では、具体的にどうしたらいいか、CX強化に向けた現実解を考える。