「クラウドファースト」という考え方が広く企業の間に浸透し、大企業を中心にパブリッククラウド、特にIaaS/PaaSの積極的な活用が増えている。一方、特に中堅・中小企業の中には、グループウエアなどのSaaSの活用にとどまっているケースも多い。その背景には、セキュリティの問題をはじめ、実際にコスト的メリットが得られるのかなどいくつかの懸念が根強くある。こうしたことから、パブリッククラウドのインフラサービスを導入することに抵抗を感じている企業も少なくない。
また、近年では中堅・中小企業にとってもビジネスのグローバル展開が重要な課題となっている。中でも13億人という巨大な人口を抱える中国は、経済成長に鈍化が見られるとはいえ、企業にとって最も魅力的な海外市場であることに変わりはない。
一般に中国の拠点でのITシステムの利用を考えたとき、例えば日本側のクラウド上にシステムを構築し、現地からアクセスするという仕組みが考えられるが、実際にはいわゆる「グレート・ファイアウォール」の問題などもあって、必要最低限のレスポンスが得られないということもよく指摘される。これに対し、現地でシステムを構築したり、現地のクラウドサービスを利用したりしようとすると、例えば現地サービス事業者との間で契約業務をこなさなければならないなど、中堅・中小企業にとっては何かと荷が重い。
このような、中堅・中小企業が抱えるIT活用をめぐる問題を一挙に解決するものとして期待される新サービスが「SBクラウド」だ。
去る2016年5月13日、ソフトバンクと中国市場でトップシェアを獲得しているパブリッククラウドサービス「Alibaba Cloud」を運営するアリババグループが、合弁で新会社SBクラウドを設立した。「Alibaba Cloudのサービスを日本国内にも展開しようというのが、その狙いです」とソフトバンクの吉田威典氏は語る。