低コストの米国データセンターをバックアップ拠点として活用

 近年、データのバックアップに取り組む企業が増えている。何らかの事情でデータの消失などが起これば、ユーザーに迷惑をかけるだけでなく、企業としての信用を傷つけてしまうかもしれない。Yahoo! JAPANもまた、こうした課題認識を高めている企業の1つだ。同社の場合、バックアップ対象となるデータの規模が非常に大きい。

 「膨大なデータを、いかに確実かつ高速、低コストでバックアップするか。それは大きなチャレンジです」とYahoo! JAPAN システム統括本部の正木大介氏は語る。

ヤフー株式会社<br>システム統括本部<br>サイトオペレーション本部<br>インフラ技術1部クラウドイノベーション<br>正木大介氏
ヤフー株式会社
システム統括本部
サイトオペレーション本部
インフラ技術1部クラウドオペレーション
正木大介氏

 Yahoo! JAPANが提供する多様なサービスには、それぞれの所管部門がある。正木氏の属するサイトオペレーション本部にバックアップの要望を寄せたのは、データ消失の影響度が大きいサービスの担当部門だった。

 「2015年の夏ごろ、専門性を持つITベンダーやクラウド事業者などから話を聞いてバックアップの具体像を検討し始めました。システムに求められる要件は1日当たりのデータ転送量が数十TB(テラバイト)、バックアップサイトのデータ容量がPB(ペタバイト)レベル。非常に大規模なので、本当にできるのかどうか、慎重に検討を進めました」(正木氏)

 バックアップのためのシステム構築だけでなく、バックアップ先の選択も大きなテーマだった。正木氏はこう続ける。

 「Yahoo! JAPANは国内外で複数のデータセンターを運営しています。国内データセンターならデータ転送の遅延がほとんどなく、使い勝手もいい。国内データセンターはその利点に応じたコストがかかるが、社内のさまざまな部門が活用していた。そこで、米国のデータセンターに着目。日本に比べると電気代はおよそ4分の1でスペースコストも安いですから」

 バックアップシステムなので、一般ユーザーが利用するユーザビリティーに影響がある他のサービスに比べると遅延の条件を緩くできる。とはいえ、一定以上の遅延が起きれば、1日に求められるデータ転送量を確保できない。太平洋を越えて大容量データを休みなく米国に送るためには、多くのハードルを乗り越える必要があった。

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