高まるフラッシュ・ストレージへの期待。しかし、移行に踏み切れない懸念材料も

 企業が扱うデータ量が爆発的に増え、データを中心としたITインフラへの変革が求められている。増え続けるデータを有効活用し、新たな付加価値を生み出す――。この用途で、迅速な洞察を得て、競争優位を獲得することができるからだ。

 この際、データの効率的かつ高速な保管・分析を行うITインフラの良し悪しがビジネスの成否を左右するといっても過言ではないが、大量のデータ処理が必要なITインフラでは、I/Oボトルネックがシステム全体の性能低下を招く例も見受けられる。過去10年間のCPUやネットワークの進化に比べ、ITインフラを構成する主要コンポーネントのハードディスクドライブ(HDD)の大容量化は進んでいるものの、高速化についてはそれほど進んでいない。

 こうした中、そのI/Oボトルネックを解消するために注目が高まったのが、半導体のフラッシュ・メモリーを使ったストレージ、「フラッシュ・ストレージ」である。フラッシュ・ストレージは、既存のHDDのように物理的な駆動部分を必要としない電子回路であるため、処理性能が良く、音も静かで電力消費も少ないことから、HDDの置き換えとして注目されている。

 フラッシュ・ストレージは、昨今の需要増とともにHDDとの価格差が徐々に縮まり、市場が急速に拡大。数年後には、フラッシュ・ストレージとHDD搭載ストレージの立場が逆転するという予測もあるほどだ。

 しかし、その一方で「信頼性や可用性など、フラッシュ・ストレージの製品・機能面に対する不安がある」「フラッシュの導入が適切かどうか見極められない」「購入価格が高く、費用対効果が明確でない」といった懸念材料も挙げられている。

 こうした不安要因として指摘されているのが、フラッシュ・ストレージの代表的な製品であるSSD(Solid State Drive)を採用したSSDフラッシュ・ストレージだ。SSDフレッシュ・ストレージシステムは、たとえすべてをSSDで構成したオールフラッシュ・ストレージシステムでも、HDD製品との互換性という呪縛から逃れることができない。ベンダーはコモディティー製品を採用することで開発コストを削減できるが、そのしわ寄せは「フラッシュ・メモリー本来の価値を享受できない」という形でユーザーにくることに留意しなければならない。

 期待したほどI/O処理性能が出ないケースもあり、課題の一部は解消されないこともあるので注意が必要だ。これでは、せっかくフラッシュ・ストレージを検討しても、投資対効果を十分に発揮できない可能性も高い。選択肢が増えていく中で、フラッシュ・ストレージシステムの中での選択を判断できるようにならないといけない。次ページ以降では、そのポイントについて解説する。

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