社内ルールに基づき映像を消去。しかし「再利用したかった」という声も

 「カンテレ」の愛称で知られる関西テレビ放送は、1958年の開局以来、ドラマ・報道・バラエティ・スポーツなど様々な番組で視聴者に親しまれている。また、先進技術の開発や導入に積極的な放送局で、優れた技術開発に贈られる日本民間放送連盟賞(技術部門)を2011年から6年連続で受賞している。

関西テレビ放送の社屋。同社は、優れた技術開発に贈られる日本民間放送連盟賞(技術部門)を2011年から6年連続で受賞している。
関西テレビ放送の社屋。同社は、優れた技術開発に贈られる日本民間放送連盟賞(技術部門)を2011年から6年連続で受賞している。

 2016年12月、そのカンテレで大規模な映像データのアーカイブシステムが動き始めた。対象分野は報道とスポーツ。番組を制作するうえで、過去映像を再利用しやすい環境が生まれた。

 今回のプロジェクトの第一の目的は、映像データ再利用の促進である。関西テレビ放送の小池中氏はこう説明する。

 「放送局は、一定のルールを決めて取材した映像のほとんどを消去するのが一般的です。当社の場合は、3カ月で消去します。ただ、例外はあります。再利用が見込めるような残したい映像は、社内の手続きを経て保存判定がなされ、保存・管理されます。しかし、これまでに例外保存されてきた映像は全体の1割にも満たないでしょう」

関西テレビ放送株式会社<br>放送技術局 技術推進部(兼)報道局 報道映像部<br>小池中氏
関西テレビ放送株式会社
放送技術局 技術推進部(兼)報道局 報道映像部
小池中氏

 結果として、半年前の映像を再利用したいのに、すでに消去済みだったという事態が発生する。これを小池氏は「機会損失」と捉えている。番組の品質を高める機会を、映像の“在庫”がないために生かせないからだ。

 こうした課題意識の高まりを受け、カンテレは、すべての映像を従来のビデオテープではなく、ファイル形式でテープに保存するアーカイブシステムの構築に向けて動き出した。同社が採用したのは、ニーズに合わせたストレージの選択を可能にするストレージソフトウェアに、省スペースで大量のデータを保管する大型テープライブラリーと超高速オールフラッシュストレージを組み合わせたソリューションである。

 以前はその大半を消去していた報道・スポーツの映像だが、今後はそのすべてが保存される。番組編集の選択肢が広がることで品質向上が期待できる。また、新システムにより、過去の映像入手が効率化されることで、編集スタッフはより多くの時間をコア業務に集中できる。このことも番組の品質をより高めることに貢献するだろう。ビッグデータ時代に突入し、映像データは放送業界に限らず、急速にデータ量を増加させている領域の一つとなっている。ここでは、ITの技術革新に向き合い、すべての映像データを資産化してコンテンツの品質向上を目指すカンテレの挑戦を追う。

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