基幹系のクラウド化が遅れている理由
「クラウドファースト」のアプローチを採用する企業が増えている。特に、メールやグループウェアといった情報系システムでは、すでに多くの企業がクラウドを積極的に活用しており、ビジネスに欠かせないシステムとして、業務上の重要な役目を果たしている。
ところが、基幹系システムにおいては、話はそこまで単純ではない。ミッションクリティカルなシステム特有の様々な要件がネックとなり、クラウド移行が遅れているのが実情だ。
例えば「可用性」の問題がある。オンプレミスかクラウドかによらず、基幹系システムは高いサービスレベルを常に維持できなければならない。オンプレミス並みの基準を満たすクラウド基盤を見つけることができず、移行を断念するケースは多いだろう。また、機密情報を扱う上で「セキュリティ」も重要だ。現在市場には様々な対策を備えたサービスも登場してはいるが、自社で運用してきたサーバーが外部事業者に移ることで、適切かつ十分な対策が打てなくなることへの懸念は根強い。
またクラウドへの移行が進まない背景には、システムの物理的な問題も絡む。現在、多くの企業が「Oracle Database」を基幹系システムの基盤に採用している。このOracle Databaseは、高可用性を担保するクラスタリング機能「Oracle Real Application Clusters(以下、Oracle RAC)」を備えているが、この仕組みに対応したクラウドサービスが、現在では極めて少ないのだ。こうした既存のデータベース環境をそのまま継続利用できない企業が多いことも、基幹系クラウドの実現の障壁となっている。
とはいえ、オンプレミスでの運用にはコストと人的負荷がかかる。また、今後5年、10年先の企業システムを考えたとき、企業はシステム更改のタイミングでクラウドを視野に入れた検討を行わざるを得ないだろう。ハイブリッドといえば聞こえはよいが、要はダブルスタンダード。基幹系システムだけがいつまでも今のまま残る状態は好ましくないという声も徐々に高まっている。
この状態を脱却するには、基盤となるクラウドサービスの選び方が肝となる。最適なサービスは、果たしてどのようなものなのか。