管理対象の多様化が生む“属人的”運用の落とし穴
ITシステムを安定して稼働させ、ビジネスニーズに的確に対応し続けることは、IT部門の最重要業務の1つ。そのために大きな役割を果たすのがITサービスマネジメントシステム(以下、ITSMシステム)だ。ところが今、多くの企業でITSMシステムが効率的に機能しなくなっているという。
ITSMシステムは、ITシステムの多様化と複雑化に合わせ、より広い領域をカバーすることが求められてきた。その結果、ソフトウエア配布やリリース管理、インシデント管理、プロジェクト管理、ナレッジ管理など、機能別に独立した複数のツールが混在する「ITSMシステムのサイロ化」が多くの企業において進行。これらのツールから集めた情報を、現場のエンジニアたちが手作業で結合し、運用管理上の判断に生かすしかない状況が生まれているのだ。
例えばITシステムの一部で障害が発生し、インシデント管理ツールに通知が届いた場合を考えてみよう。現場のエンジニアはインシデントを確認すると、まずは問題管理ツールにその内容を入力。その後、関係する利用者への告知をメールで行うとともに、修復に必要な作業を専門家に依頼することになる。
ここで注目したいのが、対応の中心的役割を担っているのが、ITSMシステムではないことだ。あくまでもエンジニア=人に依存しており、人手で複数ツール間の情報連携を行っている。つまり、システムがサイロ化された状態では、ITSMの属人化が進んでしまうのである(図1)。
これを放置すれば運用現場の負担は増え続け、関係者間の連絡や、問題への対応にかかる手間と時間も増大していく。また、属人的な管理はヒューマンエラーを招きやすく、担当者の入れ替えなどがあれば、サービス品質が低下する可能性もある。管理漏れや、監査対応の煩雑化も懸念される。
つまり、サイロ化したITSMシステムが運用業務における非効率性を増大させ、サービス品質の低下やコストの増加、スピードの低下、ガバナンス低下、リスク増大を招く要因になっているのだ。
こうした状況を踏まえ、ITSMシステムの世界では、大きなパラダイムシフトが起こりつつある。属人的なITSMの課題を解決する方法が登場し、注目を集めているのだ。