「ハイブリッドストレージ」は本当に買いなのか
近年、記憶媒体としてSSDなどのフラッシュメモリを用いる「フラッシュストレージ」が注目を集めている。駆動部位を持つHDDに比べ、I/O速度が圧倒的に速く、データ運用のボトルネックを極小化する。壊れにくく、低消費電力という点も大きなメリットだ。
HDDベースのストレージをフラッシュストレージに移行すれば、システムは飛躍的に進化する。データの高速処理はビジネスを革新し、ビッグデータやIoTの活用を加速する。しかし、フラッシュメモリはHDDに比べて容量単価が高額だ。近年は価格差が縮まりつつあるが、膨大なデータを扱うストレージを「オールフラッシュ」に移行するのはコスト的なハードルが高い。
そこで期待を集めるようになった解決策の一つが、HDDとSSDを併用する「ハイブリッドストレージ」の活用だ。高速性が求められるデータはSSDで処理し、そうでないデータはHDDで処理する。比較的安価なHDDを組み合わせることで、オールフラッシュよりコスト負担を抑えられる。
ただし、問題はその実用性だ。HDDとSSDを混在させて、本来の高速性能を損なわずにコストメリットを打ち出せるのか――。
この答えを探るべくハイブリッドストレージとオールフラッシュの比較検証が行われた。
検証環境のストレージには日立製作所(以下、日立)の最新ストレージ「Hitachi Virtual Storage Platform」(以下、VSP)ファミリーの「VSP G400」を、サーバには「Cisco Unified Computing System」(以下、Cisco UCS)を採用した。
検証環境のシステム構成は図1の通りだ。この構成でOracle RACシステムを構築している。検証は物流倉庫の出荷・配送管理を模した「OLTP処理のベンチマーク」とSwing ベンチの売上履歴に対し同時問合せ処理をする「バッチ処理」を対象とした。なお、物流倉庫は複数あり、倉庫は一つの担当地域と一定数の担当顧客が存在し、倉庫数が増加するとデータベースのデータ量も増大する仕様となっている。この環境で「ALL SSD(1130GB)」「ハイブリッド(SSD:339GB、HDD:791GB)」「ALL HDD(1130GB)」の3タイプについてOLTP処理性能を比較した。
次ページ以降ではその結果を紹介する。