一部の企業がオンプレ回帰。その理由とは
“クラウドファースト”という言葉に代表されるように、パブリッククラウドへとシステム基盤を移行する企業が増えつつある。しかしこのような取り組みをすでに行った先進企業の中には、システムの一部をパブリッククラウドからオンプレミスへと戻すケースも少なくない。
その理由は複数ある。「セキュリティの不安」「利用可能なリソースの柔軟性が不十分」「カスタマイズができず自社要件に適合しない」といったことはその一例だ。このような企業では、パブリッククラウドにシステムを集約するのではなく、オンプレミスとパブリッククラウドを使い分ける方向へとシフトしつつある。
その一方で、社内に共通IT基盤を構築し、社内システムの集約を推進してきた企業でも、似たような現象が起きている。一部のシステムを共通IT基盤から個別インフラへ戻す動きが見られるのだ。
こうした現象はなぜ起こるのか。その理由は企業システムの多様化にある。システムごとに要件が大きく異なるようになっている上、モバイル、ソーシャル、ビッグデータの利用が拡大。求められるサービスレベルやワークロードの幅広さに、共通IT基盤では対応しにくくなっているのだ。
これらの動向から見て取れるのは、“万能型インフラ”の追求には限界があるということである。要件の異なるシステムを単一インフラに集約することは、実は現実的ではない。企業システムがここまで多様化していなかった時代には、このことが顕在化しなかったにすぎない。
もちろん昔のように、システムごとに時間をかけてITインフラを構築できる時代も、すでに終焉している。現在ではITが深くビジネスに組み込まれるようになっており、ITシステム抜きにビジネスを遂行することは不可能だ。しかしビジネス機会には当然ながら“賞味期限”が存在し、チャンスを捉えて俊敏にビジネスを開始しなければ、利益確保が困難になる。つまりITシステムをどれだけ早期に立ち上げられるかによって、得られる利益が大きく左右されるのだ。

HP ConvergedSystem
多様な要件を持つそれぞれのシステムに柔軟に対応しつつ、その立ち上げスピードをいかにして高速化するか。これこそが、これからのITインフラに求められる最重要課題なのである。