人材派遣法の改正でIT業界に大きな影響

 ITエンジニアなどをクライアント先に派遣する「特定労働者派遣」が今年中にも廃止される見込みだ。2015年6月24日までを会期とする通常国会で「労働者派遣法」の改正案が可決される可能性が高まっているためである。

 現在の派遣法では、事務や営業などに携わる許可制の「一般労働者派遣」と、情報システム開発や通訳、デザインなど、一定のスキルや知識が求められる「専門26業務」の人材派遣をメインとした届出制の「特定労働者派遣」に事業が区別されている。登録型雇用の一般派遣は、同じ現場への派遣期間が最長3年までとなっているが、自社の正社員や契約社員を顧客先へ派遣する特定派遣には、この期間制限がなかった。

 しかし、改正派遣法では、特定派遣そのものが廃止され、全ての派遣労働者が3年以上同じ職場で働くことができない一般派遣に切り替わることになる。派遣事業全体が国の許可制になることも含めて、これまで特定派遣を行っていた企業には予想以上に大きな影響が出てくることになる。

 特にインパクトが大きいのがIT業界である。

 エンジニア派遣をメインに事業を行ってきた企業はもちろん、大手から中小まで、約1万5000社あるといわれるSIerも、請負などの受託開発だけでなく、委託契約となるSES(システムエンジニアリングサービス)や人材派遣などを中核業務としている企業が少なくない。これらの事業者は、全て法改正後は許可基準の高い一般派遣に移行しなければならなくなる。

 この変化に対応するには、社員のさらなる雇用安定施策や財務体質の強化に加え、従来なら必要のなかった法定帳票の整備、派遣期間の厳密な管理、競争力強化に向けたマッチング精度の向上など、業務プロセス全般の大幅な見直しが迫られてくる。

 以下では、法改正を踏まえたビジネスモデルの変革や事業運営の強化に向けてどのような対策が必要になるかを検証していく。

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