油断禁物! 多くの企業がはまった落とし穴の数々
国内外での競争力を高める施策として「ワークスタイル変革」に取り組む企業が増えている。時と場所を選ばないコミュニケーションを実現し、社員の働き方を変えることで、生産性の向上やワークライフバランスの適正化を図ることができるほか、多様な雇用・就労形態に対応でき、人材の有効活用も可能になる。
しかし、プロジェクトが徒労に終わることも少なくないようだ。
典型的な失敗例の一つが、せっかく導入した仕組みが使われないというケースだ。これは、IT部門が現場の意見に耳を傾けなかったことが主な原因と考えられる。反対に、全員の意見を聞いたところ、職種や立場ごとに意見が異なり、収拾がつかなくなったという声も聞く。また、メリットを定量的に示しづらいため、稟議が通らず、最初の一歩目でつまずいてしまう場合もあるようだ。
では、どうしてこうした事態に陥るのか。原因の一端はワークスタイル変革プロジェクトの特異性にある。
例えば、業務システムの導入プロジェクトは、すでに長年にわたって構築してきた業務プロセスや既存のシステムがあり、必要な機能要件が明確になっていることがほとんどだ。したがって、システムの完成形もイメージしやすく、合意を形成しやすいし、費用対効果も把握しやすい。
一方、ワークスタイル変革は、これまで社内になかった仕組みを導入し、まったく新しい働き方を模索し、実現していかなくてはならない。単にツールを増やせばよいと勘違いし、電話やメールに加え、IM(インスタントメッセージ)やWeb会議などを導入するだけでは、ユーザー部門は、それで「自分の仕事がどう変わるのか」をいまいち理解しづらい。場合によっては、現状を変えたくない“反対勢力”の強力な反発に直面することになる。
このように、ワークスタイル変革には、特有の課題が多く、それをクリアするには経験に基づく高度なノウハウが求められる。次頁からは、3年間で約150件ものワークスタイル変革に携わってきた2人のエキスパートの経験を基に、陥りやすい落とし穴と、それを避け、プロジェクトを成功に導くための秘訣を考察していく。