ジョン・ヒル 氏
Veyance Technologies, Inc
CIO
ジョン・ヒル 氏

 グローバル市場で戦う日本企業にとって、最適なICTインフラの実現は重要な経営課題だ。急速な環境変化に即応し、新たな価値創出に貢献できる環境が求められる。近年では日本でも「クラウドファースト」の流れが加速しつつあるが、企業活動の根幹を支える基幹システムについては、依然として自社構築を選ぶ企業も少なくない。しかし、クラウド先進国の米国では、既にこうした状況も大きく変わりつつある。その代表的な例ともいえるのが、大手製造業のVeyance Technologies(以下、Veyance)の取り組みだ。

 同社は欧州大手タイヤメーカー、コンチネンタルのグループ企業であり、コンベアー・ベルト、工業用ホース、動力伝達用製品などのエンジニアリング製品を製造している。年間売上高は約20億USドル、世界21カ国に拠点を展開し、1万人弱の従業員を抱える典型的なグローバル製造業だ。

 その同社が、ICTインフラの全面クラウド化に向けて舵を切ったのは2012年のこと。同社のCIOを務めるジョン・ヒル氏は、プロジェクトの背景を次のように話す。

 「同年にCIOに着任した後、私がまず実施したのがICTインフラの現状を把握するためのSWOT分析(※)です。その結果、『SAPシステムの経験が豊富』『意思決定が早く、変化も受容できる』などの点は当社の強みでしたが、『ICTインフラが旧式で断片化されている』『現場のユーザーの信頼を得られていない』などの弱みがあることも分かりました。また、『SAPのMRP機能をより活用することで事業パフォーマンスを改善できる』『クラウド利用により迅速な変革が遂げられる』などの機会があること、『セキュリティ実装が弱い』『災害/事業継続対策が限定的』などの点が脅威であることも明らかになりました。ビジネススピードの向上や競争力強化を図っていくためには、分析で明らかになった課題を解消すると同時に、強みの部分をより伸ばしていかなくてはなりません。そのための方法として選んだのが、クラウドによる全面的なICT変革だったのです」。

 Veyanceは、新興クラウドベンダーであるVirtustreamのサービスを採用し、SAP ERPで構築された基幹システムも含むICTインフラの全面クラウド化に踏み切った。次ページ以降では、同社の取り組みを通して、今後のクラウド活用のあるべき姿を探っていく。

※SWOT分析:Strengths、Weaknesses、Opportunities、Threatsの四つの観点で現状分析を行う手法

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