昨年8月、総務省は2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに4K・8K放送を普及させるべく、4K・8Kの試験放送開始のスケジュールを前倒しした。その背景には、国際間の次世代放送における覇権争いがある。しかし、今のハイビジョンの16倍の解像度を持つ8Kに移行するには、撮影や編集、放送システムなどの領域での飛躍的な進化が必要になる。そこでは、ビッグデータ時代のストレージ戦略を示唆する新たなアプローチが進められている。

グローバル競争における覇権をかけて8K実用放送を2年前倒し

 今年1月にラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「2015 International CES」では、日本と韓国の電機メーカーが競って次世代テレビを発表。主導権争いがヒートアップしていることを印象付けた。そこで特徴的だったのは、すでに製品化が進んでいるフルハイビジョンの4倍の解像度となる4Kだけでなく、さらにその次のステージである8Kでも同時に競争が繰り広げられていることだ。

 これには、次世代テレビを景気高揚の起爆剤としたい日本政府の思惑もからむ。昨年8月、総務省が主催する第3回「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」で4K・8K放送の実用化に向けたスケジュールが見直され、8Kの実用放送の開始が2年前倒しされて2018年とされた(図1)。2020年の東京オリンピック・パラリンピックのころには「4K・8K放送が普及し、多くの視聴者が市販のテレビで4K・8K番組を楽しんでいる」ことを目指す。

 このロードマップで注目されるのは「4K放送と8K放送が併存する」とされたことだ。以前のロードマップでは4年あった実験放送開始のタイムラグも2年に短縮されている。このことから“いきなり8Kの時代が到来するのでは”という見方も出てきた。これは4K放送で先行する韓国への対抗策とも言われる。フルハイビジョンの16倍の解像度を持つ8Kを先取りすることで、グローバル競争における優位性を確立することができるからだ。

 しかし、こうした“国策的前倒し”には、民放局各社からは困惑の声も上がっている。今の2Kから4Kに移行するのにも、撮影機材や編集機材、システム設備などを刷新する必要があり、多額の投資が必要になる。さらに短期間で8Kへ移行するとなると、投資が回収できないまま、次の投資が求められることにもなりかねない。

 そこでは膨大な映像データを取り扱うために、利用メディアやストレージの見直しも必要になる。この放送業界における4K・8K放送への対応から、他業種においてもビッグデータ時代のストレージ戦略を考えるうえでのヒントを読み取ることができそうだ。

(図1)
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