世の中は「ピーク」のせいで時間やお金の無駄だらけだ。

 例えば「2016年の直轄国道における年間渋滞損失時間は合計13億9000時間。年間78万人分の労働力に相当する」。国土交通省の推計だ。全国平均では平日の午前7時台と午後5時台に利用が偏る。午前7時台の交通量は6時台の約2倍に上り、渋滞が深刻に。国交省はピークを避けた分散利用を呼びかけている。

 他方、内閣府によれば「東京都居住者の通勤による損失額は1人当たり年間66万2000円」という。平均通勤往復時間と賃金を基に算出した全国調査では東京都がワーストで、神奈川県(65万6000円)、千葉県(50万円)など周囲の県が続く。

 東京圏は電車通勤する人が多い。東京圏主要区間のラッシュアワーの平均混雑率(輸送人員/輸送力)は2016年、165%だった。これは「折りたたむなど無理をすれば新聞を読める」という目安(180%)をやや下回る程度。通勤電車でくつろいだり、仕事を片付けたりするのは到底無理だ。

 道路と同じく、電車もピークの偏在が顕著である。多くは午前7時台から8時台が混み合う。鉄道各社はこのピークを緩和するために、巨費を投じて車両を購入し、路線を整備し、運転士や駅係員を雇ってきた。

 現在、鉄道各社は輸送力向上に向けた大型投資を手控える。完成する十数年後には無駄な投資に終わる公算が高いからだ。輸送人員は24年前の1993年以降、減少傾向にある。経済は上向かず、人口減少も始まっている。満員電車と渋滞による社会的損失はしばらく続くしかないのだろうか。

最少費用で最大効果を目指す

 社会的損失を回避するために本特集で提唱したいキーワードが「ピークカット」だ。かつてのように設備や人員を大幅に増強して対応するのではなく、最少の費用と時間でシステムや仕組みを見直し、工夫して対応するのが基本的な考え方だ。当然ながらITの活用も欠かせない。

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