「俺はあと数年で定年だ。自分がいる間はメインフレームの業務は変えない」。30年近くオープン系への移行を手掛けていると、こんな年長者の言動がたびたび聞こえてくる。安定稼働のまま定年を迎えたいと考える年長者が抵抗勢力となり、システムが塩漬けになる典型例だ。

 抵抗勢力はユーザー企業内部にもITベンダーにもいる。特にやっかいなのはITベンダーだろう。

 ある製造業ではこんなエピソードがあった。その企業はメインフレームの運用業務をITベンダーにアウトソーシングしていた。アプリケーションの内容は把握していたが、インフラ部分や他システムとの接続部分についてはITベンダーに任せきりだった。

 この企業がメインフレームからオープンシステムへの移行を検討し始めた。作業工数を見積もるため、筆者が依頼を受けて現行システムを調査した。するとアプリケーション部分についてはIT部門でも分かるものの、ITベンダーのインフラチームが管理しているソースコードの状況は開示されなかった。

 インフラチームは外字を含めた文字コードの変換設定や、共通ルーチンなどを別ライブラリとして管理していた。これらのソースコードが分からなければ、全体の移行工数を見積もれない。筆者がいくら問い合わせても「ソースを渡せるのは1カ月後」などと言うばかり。コマンド操作一つで取得できる作業にもかかわらず、のれんに腕押しの状態だった。ITベンダーの「牛歩戦術」による抵抗で、プロジェクトが完全に中断した。

顧客のつなぎとめに必死

 ITベンダーが抵抗勢力になる気持ちは、メーカーにかつて勤務していた筆者にはよく分かる。顧客がメインフレームを撤廃すれば、収益源が減るからだ。新規顧客が増える見込みがないなかで、既存顧客を何としてもつなぎとめたいと思うものである。

 残念ながら、メインフレーム事業は若手技術者にとって魅力的ではない。技術者の高齢化は顕著だ。それでも既存顧客がいるから自分たちの存在意義がある。事業撤退となればお払い箱かもしれない。狙うはソフトランディング。できる限り現状を維持し、リプレースされない程度に徐々にオープン化する、という方策だ。

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